◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 昨年8月に中央競馬から地方の兵庫競馬に戻り、もうすぐ1年。9月には58歳になる小牧太騎手が、元気いっぱいの騎乗を見せ続けている。

園田、姫路の勝利数でトップを快走。「このままけがなく無事にいって、1位で今年を終えられたらいいね」と、JRA移籍前の03年以来22年ぶりの兵庫リーディング獲得に、闘志を燃やしていた。

 6日に地方通算3600勝を達成した名手だが、20年ぶりに帰ってきた古巣は以前の活躍を知らない若手がほとんどだったという。「知らないのは仕方ない。偉そうな顔をせず、若いジョッキーと同じ目線でいることを心がけている。何かあっても怒らず、自分が悪かったら謝ることが大事」。先輩風を吹かせず調教、レースに臨み、年齢の離れた新たな仲間たちと信頼を築き上げてきたのは立派の一言だ。

 ハードな毎日でも、若い頃の走り込み、自転車トレなどの鍛錬による肉体の貯金で乗り越えてきた。早朝3時半から多い日は10頭の調教に乗り、その後のレースでは最多8鞍に騎乗。週2日開催のJRAと違い、兵庫競馬は主に週3日開催だが、「疲れるけど、もう慣れた。この年齢になると早く目が覚める。ちょうどいい仕事だね」と天職と感じている。

 JRA所属時の晩年は乗り鞍が激減し、23年は1勝もできず引退を考えたこともあった。地元で送る第3の騎手人生について「地方復帰は僕しかやっていないこと。いろいろな経験があって今がある。今は全てが楽しい」。輝きを取り戻した小牧太には、いつも温かいエールが送られている。充実した表情を見て、元気をもらうことができた。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

 ◆内尾 篤嗣(うちお・あつし)1998年入社。注目している若手騎手は兵庫の米玉利燕三。

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