大映の時代劇やNHK大河ドラマ「太閤記」などで活躍した女優の藤村志保(ふじむら・しほ、本名・静永操=しずなが・みさお)さんが12日、肺炎のため死去した。86歳。
品格ある演技と、着物が似合うしとやかな雰囲気で時代劇や文芸作品を彩った藤村さんが、旅立った。所属事務所関係者は、スポーツ報知の取材に最期の様子を「ご主人やめいっ子さんら家族にみとられ、安らかに息を引き取りました」と語った。藤村さんは、先月末に転倒したことをきっかけに病院を受診し、検査入院。その後は体調不良なども重なり、12日に入院先の都内病院で肺炎で死去した。
晩年は「圧迫骨折などが度重なっていた」という。遺作は2014年NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」。ナレーションを担当していたが、背骨を圧迫骨折したことで病院から「絶対安静」とされ、同作を第6話で途中降板した。
61年、大映京都撮影所演技研究所に入所。62年、映画「破戒」で主演・市川雷蔵さんの推薦で、恋人役に抜てきされ、銀幕デビュー。芸名は同作の原作者・島崎藤村と、演じたヒロインの役名「お志保」から命名された。同作での新人らしからぬ演技でその年の新人賞を数々獲得し、スターダムを駆け上がった。
大映時代劇の看板女優となり、人気シリーズ「眠狂四郎」「忍びの者」「座頭市」などで雷蔵さんの相手役で出演。勝新太郎らスター俳優と共演した。65年NHK大河ドラマ「太閤記」では、緒形拳さん演じる豊臣秀吉の正室・ねね役を好演。77年「男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」ではマドンナを務めた。
9歳から日本舞踊の稽古に明け暮れ、19歳で花柳流の名取「麗(うらら)」として日本舞踊を教えるなど、踊りにも精通。執筆でも才能を発揮し、腎臓移植問題を取材した著書「脳死をこえて」を刊行した。自身が胆石の病をきかっけに見つめ直した死生観を反映させた力作は、85年の読売女性ヒューマンドキュメンタリー大賞に入賞し、日本テレビ系でドラマ化もされた。
私生活では、1970年に映像制作会社「日本シネセル社」社長(当時)で6歳上の静永純一氏と結婚。自身の体調について、2000年スポーツ報知のインタビューで「2度も大病し、手術しました。最初は結婚して2年後の30代で消化器系を悪くした。次は50代に循環器系の病気で1か月入院しました」と明かしていた。子どもはもうけず、晩年は50年以上連れ添った夫と静かに余生を送っていた。
◆藤村 志保(ふじむら・しほ、本名=静永操)1939年1月3日、神奈川・川崎市生まれ。フェリス女学院高等部卒業後、共立女子大で古典演劇を学ぶ。62年に女優デビューし、時代劇映画や大河ドラマなどで活躍。主な出演映画は「なみだ川」「不毛地帯」「長崎ぶらぶら節」、主なドラマは「三姉妹」「てるてる家族」「風林火山」など。第59回NHK放送文化賞、文化庁長官表彰などを受賞。