宝塚歌劇宙組の新トップスター・桜木(さくらぎ)みなとのプレお披露目作「ZORRO THE MUSICAL」が、東京・東急シアターオーブで7月3日まで上演されている。桜木は1998年創設の宙組で10代目のトップとなるが、宙組一筋の生え抜きとしては初めての就任。
本作は2008年のロンドン・ウェストエンドでの初演が9か月にわたるロングラン上演を果たし、その後もパリやモスクワ、日本を始め世界各地で上演され、絶大な人気を博している。留学先のスペインで奔放な生活を送っていたディエゴ(桜木)が、故郷に平和を取り戻すため、謎の男“ゾロ”に扮(ふん)し活躍するエンターテインメントだ。幼なじみ・ルイサ(春乃)との恋の行方も見どころとなっている。
桜木は硬軟自在の芝居に、華麗な立ち回りも披露。ゾロのコスチュームもよく似合っており、神出鬼没具合も絶妙だ。ディエゴとしては、ジプシーたちと歌い踊るフラメンコシーンは圧巻の一言。一糸乱れぬステップを踏み、宙組生全体で今公演を盛り上げようとする様子が伝わってくる。幼なじみのルイサを演じる春乃も、細かい表情やしぐさで、ディエゴとゾロの間で揺れる乙女心を熱演している。
今公演を最後に8月1日付で星組へ異動が決まっている瑠風輝(るかぜ・ひかる)が、ディエゴの兄・ラモンを好演。父の後を継ぎ、暴政で民衆を恐怖に陥れる様子と、父に愛された弟への嫉妬心を見事に表現している。また、ラモンの部下で、ジプシーの娘に恋するガルシアを、風色日向(かぜいろ・ひゅうが)がチャーミングに演じている。
桜木は初日後のあいさつで「お稽古場からカンパニーみんなの勢いと熱に支えられて、みんなと一緒にいたら、何も怖くないな。どこまでも行ける気がするなって、仮面を外せたゾロみたいに思ったりしました。そこにお客様が加わって、さらに熱いテンションとなり、もう本当に感無量です」と感謝。今公演ではフィナーレナンバーはなく、トップスターの豪華な背負い羽根姿は大劇場公演までのお楽しみとなった。(古田 尚)