27日の金曜ロードショー(後9時)は、同日に2Dアニメとしては約30年ぶりの完全新作となる劇場版「RUPIN THE 3RD THE MOVIE 不死身の血族」が公開されるのに合わせて、「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)が枠を15分拡大してノーカットで放送される。「2Dアニメとしては」とうたうのは、2019年に山崎貴監督の手によってフル3DCGアニメ「ルパン三世 THE FIRST」が製作されているからだ。
「ルパンVS複製人間」(78年)に続く劇場版第2作―というよりも、宮崎駿監督の初の長編アニメ監督作と言った方がしっくり来るかもしれない。公開当時は大ヒットとはいかなかったが、年を追うごとに評価が高まり、何度も劇場公開。記者の友人の中には「邦画の最高傑作」と断言する者もいる。もちろん、この金ローにも何度も登場しており、今回は2023年5月以来、約2年ぶりの放送となる。
物語の舞台は、国連加盟国の中で最も小国とされる欧州のカリオストロ公国。ある時、モナコのカジノから盗み出した紙幣が同国で印刷されている「ゴート札」とにらんだルパンは、次元と共に秘密を探りに向かう。
その道中、2人は謎の男たちに追われている花嫁姿の少女と遭遇。彼女は、かつてルパンが命を助けてもらったことのある同国の王女・クラリスだった。ルパンはカリオストロ伯爵との望まぬ結婚をさせられようとしているクラリスを助け出すと共に、ゴート札の秘密を明かすために五ェ門と不二子、銭形警部を巻き込んで大騒動を起こす―。
「日本を代表するアニメ映画」となっているだけに、いまさら作品の魅力は…といっても仕方のないところかもしれないが、あえて言うとすれば、テレビシリーズの第1期と第2期の”いいとこ取り”をしているのが理由の一つに挙げられるのではないか。本作が公開されたのは79年。当時は第2シリーズ(77年10月~80年10月放送)が放送されていた時期だったが、本作は第1シリーズ(71年10月~72年3月)を踏襲している部分がある。
分かりやすい点が、ルパンのジャケットだろう。第2シリーズではルパンは赤いジャケットを着用。「―複製人間」でも赤色だったが、本作では第1シリーズの緑色のジャケットを着ている。
また、第2シリーズではルパンと次元、五ェ門、不二子がそろって行動し、そこに銭形警部が絡むというパターンが多かったが、本作ではそれぞれが意思を持って行動するという第1シリーズに近い描かれ方をしておりいる。それでいて、コメディー的要素が入っているのは、第2シリーズの特徴でもある。この絶妙なバランスを、宮崎監督がうまく差配していることが、人気の秘密ではないだろうか。
ちなみに、本作が公開された時のキャッチコピーには「前作をしのげないなら2作目を作る意味がない!」というものがあったが、実は「―複製人間」の配給収入(当時は興行収入を発表していない)を超えることができず。ただ、時を経て、その言葉が事実となったのだった。とはいえ、もちろん「―複製人間」も面白いですよ!(高柳 哲人)