今年で4回目を迎える音楽イベント「Lucky Fes」が8月9~11日に茨城・国営ひたち海浜公園で開催される。このほど、同イベントの発案者で実業家の堀義人さんがスポーツ報知の取材に応じ、同フェスにかける思いなどを語った。
2000年から同所で毎年行われていた国内最大級の音楽フェス「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル(通称・ロッキン)」が22年に開催地を千葉市に移転したことを受け、茨城県出身の実業家・堀さんが「Lucky Fes」を企画。「茨城のフェス文化の灯を消すな!」をモットーに、約半年という短い準備期間で同年に初開催した。
経営学を扱うグロービス経営大学院の学長や、Lucky FM 茨城放送のオーナーといった肩書を持つ堀さんだが、音楽に関しては全くの素人。「コネクションもなく、イベントもやったことがない。誰がステージを作っているのかも分からなかったし、どうやってブッキングすれば良いのかも分からなかった」。正真正銘、ゼロからのスタートだった。
それもあって、第1回では4億円の赤字を記録。経営のノウハウを熟知している堀さんでさえも「『なんでこんなにお金を使ったの?』って」と驚がくするほど。周囲からは「とあるレーベルの方に『何考えてんだ』って言われたんですよ」と冷ややかな声も飛んだ。
それでも、「そこそこの投資でそこそこで終わってしまうことが自分の経験的に一番良くない」と折れることなく翌年以降も継続。「経営用語で『赤字を掘る』という言葉を使うんですけど、思いっきり投資をして売り上げの上昇が確保できていれば、いつか利益は出るんですよ」。惜しむことなく費用をつぎ込んだ。
自身が「新参者」であることを生かし、音楽業界にとって革新的な取り組みも実践。日本では撮影禁止のライブやフェスが多い中、アーティストによっては撮影もできるようにした。「海外では普通にやってるから、初年度終わった時に『もし、写真撮るのOKにしたらどうしますか?』って言ったら半分くらい歓迎だったので、選択制にしようと」。Lucky Fesの魅力の一つになっており「素人だから思いっきり違うことやっちゃおうって初年度に決めた。それが面白い化学反応を起こしてますね」と手応えを感じている。
さらに、アーティストのキャスティングでも異彩を放つ。「オールジャンルでやってみようかと。これも『ジャンルを交ぜると客が減る。何考えてんの?』って言われたんですけど、やってみたら結構面白くて」。今年も郷ひろみ、米米CLUB、相川七瀬、HYDEなどといった長きにわたって活躍する大物アーティストから、FRUITS ZIPPER、CUTIE STREETら今はやりのアイドルも登場予定。家族3世代で来場しても全員が楽しめるフェスを作り上げている。
その取り組みは早くも数字に結びつき始めており「今年、やっと損益分岐点を超えそうな期待感が出てきた」と明かす。
ようやく国内でも認知が広がりつつあるが、堀さんが見据えるのはアジア規模のフェス。「一番やりたいのはアジアンアーティストを呼んで、アジアのファンを呼ぶこと。インバウンドが来るフェスにしたいんですよ」。積極的に海外に足を運び、世界各地のフェスも視察している。「いろんな海外のメディアとも連携したいですし、海外のフェスとも連携したい。夏といえば『Lucky Fes』。それが狙っていることだよね。そうすると30万人、40万、50万人ってアジア最大になると思う」。独自の路線で夢を追いかけている。