◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 2027年度からの共学化を公表した兵庫・武庫川女子大。私は90年度(文学部教育学科体育専攻)の卒業生だ。

体育だけは得意だったので、保健体育の教員免許が取れ、中学から続けていたソフトボール部が関西1部リーグ所属なら良かった。進路指導の教師に体育大志望を伝えると「将来が狭まるぞ」と言われた。「条件を満たすのは他にムコジョしかない(当時)」と話すと、「総合大の方がええんちゃうか」と勧められ、そうした。

 同校は大小の試みを繰り返してきた。約40年前の1年時、3学期制になった。3学期は学部を問わず好きな授業を選べた。その時なぜか、歌舞伎の女形・嵐徳三郎さん(2000年没、享年66)の講義を受けた。助手は片岡愛之助(当時、千代丸)だった。

 幼い頃から体育教師になりたかったが、教育実習前に「人に教える」行為が恐ろしくなった。迷ってばかりの自分がいたからだ。教員免許は取ったが、描き続けた夢は砂でできたようにもろかった。

 新聞記者を選んで正解だったかは分からない。

しかし、演劇の専門記者として歌舞伎を担当している。高校教師の一言がなければ、横断型教育で歌舞伎と出会っていなければ、人生は違っていた。大学時代に得たのは、己を一番知るのは自分のようで決してそうではない、ということだ。

 卒業生として共学化は複雑な思いだ。少子化で生徒募集停止の学校は後を絶たない。母校も悩んだだろうが、在校生の戸惑いも理解できる。心乱れる状態でも目の前の「学びの幸福、奥深さ」は忘れず過ごしてほしいと願っている。(芸能担当・内野 小百美)

 ◆内野 小百美(うちの・さゆみ)1991年入社。編集委員。50代で早大大学院(修士課程)修了。新聞史の研究を続ける。

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