歌舞伎俳優の中村勘九郎が17日、都内で歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(8月3~26日)の第3部「野田版 研辰の討たれ」の稽古場取材会に松本幸四郎、中村七之助、市川染五郎、中村勘太郎、中村長三郎と出席した。
演出家の野田秀樹氏が脚本、演出を手掛ける野田版歌舞伎の第1弾を2005年以来、20年ぶりに再演。
勘三郎さんとのタッグで新たな歌舞伎を生み出した野田氏は「2001年の初演、05年の再演、ずっと彼とやっていた。呪縛というか、彼の面影を追ってしまう。でも、稽古が進んでいくうちに、新しいものになっているなと。若い人たちもすごく良くて、新鮮な舞台になっています」。勘九郎が演じる辰次については「遺伝子がね。稽古を見ていて『勘三郎じゃないか』と思うことがある。面影もあるけど、新鮮なものも感じる」と太鼓判を押した。
勘九郎が演じていた平井才次郎役を勤める長男の勘太郎は幼い頃から「研辰の討たれ」の映像を見ていたことを明かし、「稽古が毎日、楽しい。野田さんの稽古は一人、一人に声をかけてくださるので、ありがたい」。
幸四郎は20年前を振り返り「すべてがキラキラして、稽古場から『見たこともないものを俺たちが生むんだ』という活気があった。また上演できることが、うれしい」。七之助が「稽古で父(勘三郎さん)に死ぬほど怒られたのを覚えている」と語ると、野田氏は「勘三郎さんが七之助くんにダメ出しをしていたので、稽古を止めて、『演出家は俺だから』と言いました」と明かした。
◆「野田版 研辰の討たれ」 粟津藩藩士の守山辰次(勘九郎)は、元は刀の研屋。研屋の辰次で「研辰」。お調子者の辰次は、殿様の刀を研いだ縁で武士に取り立てられるも、町人根性が抜けず、周囲からはさげすまれる始末。主君の仇討ちを見事成し遂げた赤穂浪士にわき上がる道場でも、仇討ちのばかばかしさを言い放つので、家老の平井市郎右衛門(幸四郎)にこっぴどく叱られ、粟津藩主の奥方萩の江(七之助)の前で散々に打ち据えられる。