日本人女性で初めて北極点に到達した冒険家で女優の和泉雅子(いずみ・まさこ)さんが9日午後1時3分、原発不明がんのため自宅で死去した。77歳。

所属事務所が18日に発表した。1963年にモスクワ国際映画祭金賞の映画「非行少女」(浦山桐郎監督)などに出演し、吉永小百合、松原智恵子と「日活三人娘」として人気を博した。

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 国内外で評価された和泉さんの代表作「非行少女」は、監督が「キューポラのある街」(62年)の浦山桐郎氏。15歳の少女を演じたが、最初から強烈だ。ビールを一気飲みし、たばこも吸う。貧しさから人生思い通りにならない怒りを体内に充満。海を見れば飛び込み、感情があふれれば絶叫する。まるで本能で生きるオオカミのよう。問題行動ばかりで大人も手がつけられない。狂気すら感じさせた。

 そんな中、幼なじみの裕福な青年(浜田光夫)だけは彼女に好意を寄せ、決して見捨てない。その誠実さは、少女の目を覚まさせる。

凶暴な冒頭とは完全に別人のように変ぼうを遂げるラスト。一人の人物を、驚異的な振り幅の広さで演じ切っていたところに女優としての真価をうかがわせる。このとき和泉さんはまだ16歳だった。

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