日本人女性で初めて北極点に到達した冒険家で女優の和泉雅子(いずみ・まさこ)さんが9日午後1時3分、原発不明がんのため自宅で死去した。77歳。

所属事務所が18日に発表した。約10年前に生前葬を営んだこともあり、故人の遺志で葬儀は行わない。1963年にモスクワ国際映画祭金賞の映画「非行少女」(浦山桐郎監督)などに出演し、吉永小百合(80)、松原智恵子(80)と「日活三人娘」として人気を博した。

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 和泉さんと日活の青春映画でコンビを組んだ歌手の舟木一夫(80)はこの日、都内でのコンサート開演前にスポーツ報知の電話取材に応じ、声を詰まらせながら盟友への思いを語った。

 訃報(ふほう)はこの日の朝、家族から知らされた。「なんか…。聞いた瞬間からよく分からないんだけど涙が止まらなくて。ご冥福(めいふく)をどうのこうの、という遠い仲じゃない。悲しい、とかでもないんだけど涙が出る。青春の一部だからね思い出というより、そのものだから…。勝手にサッサと逝っちゃってさ」と喪失感を口にした。

 舟木と和泉さんは1964年の映画「あゝ青春の胸の血は」で初共演し、以降「高原のお嬢さん」「北国の街」「絶唱」など6作品で共演。

60年来の友人関係で、和泉さんが舟木の座長公演にたびたび足を運び、会えば「舟木くん」「マコちゃん」とおしゃべりに花が咲いた。「東京生まれのちゃきちゃき、こざっぱりした性格」。生前葬のことも本人から聞き「変わってるね」と笑い合ったという。闘病していることは知人から聞いていたが、特段その話をすることはなかった。

 舟木にとって、大江賢次さんの小説が原作の悲しい愛の物語「絶唱」はとりわけ思い出深い作品。映画のみならず、主題歌の「絶唱」もヒットし、和泉さんにとっても舟木にとっても代表作のひとつとなった。

 「コンサートで『絶唱』を歌おうか外そうか迷っている最中。お客様も聴くとつらいかもしれないし、今日はどうしていいか分からなくて…」

 開演前には迷いを口にしていた舟木だったが「絶唱」をはじめ共演作の楽曲たちも予定通り披露。思いを胸に、気丈にステージを全うした。

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