和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで人気を集めていたジャイアントパンダ4頭が、先月28日に中国に返還された。国内で飼育されているパンダは東京の上野動物園にいる2頭のみとなったが、日本で1か所でだけ飼育されている希少動物は、パンダ以外にも存在する。

これから始まる夏休みを前に、一度は見ておきたい“日本唯一”の動物5種を紹介する。(樋口 智城)

 ◆アイアイ(恩賜上野動物園=東京) 童謡でおなじみ「アイアイ」も、パンダと同じく上野動物園でしか見られない。アフリカ南東部の島国・マダガスカルだけに生息する絶滅危惧種の原猿類で、目や耳が大きく、中指が異常に長いなどの特徴的な外見を持つ。2001年に同国との共同研究で繁殖推進のため雄雌2頭が来園し、今は11頭が「アイアイのすむ森」にいる。同園の金子美香子副園長は「実は童謡のかわいらしいイメージとは違って、暗がりに潜んでいる夜行性の動物。そういったギャップも楽しんでほしい」。

 ◆タスマニアデビル(多摩動物公園=東京) オーストラリアのタスマニア島にのみ生息する、現生する最大の肉食性有袋類。現地では害獣として駆除対象となり数を減らしたが、保護法のもと少しずつ生息数が回復。しかし、2000年代前半ごろから「タスマニアデビル顔面腫瘍病」の伝播(でんぱ)などにより再び激減した。同園ではタスマニア州政府の保全活動の一環として16年から飼育。広報は「展示を通し、そういった現状もお伝えできれば」としている。夜にうなり声をあげながら死骸を食べる様子から「デビル」という名前がついた説があるが、実はおとなしい動物。

現在は2頭が暮らしている。

 ◆コモドオオトカゲ(東山動植物園=愛知) 「生きた恐竜」と呼ばれる世界最大級のトカゲで、別名はコモドドラゴン。恐竜を連想させる体形が来園者の好奇心を刺激する。昨年7月にシンガポールの動物園から13歳の雄「タロウ」がやってきて以来、地元でフィーバーを巻き起こすほどの人気動物となった。「全長2.7メートルと非常に大きい。圧倒的な存在感を感じられると思います」と同園広報。絶滅危惧種に指定されており、野生での数が少ない。インドネシアの固有種で、アジアを代表する希少種のひとつ。

 ◆テングザル(よこはま動物園ズーラシア=神奈川) 7頭を飼育。東南アジアのボルネオ島のみに生息する。大人の雄の特徴である大きな鼻は雌に対するセックスアピールと言われており、鼻が大きければ大きいほどハーレムの中にたくさんの雌がいるとされる。インドネシア・スラバヤ動物園との飼育技術交流をきっかけに、09年5月に来園した。

「特徴的な雄の大きな鼻、木の葉をおいしそうに食べる姿、展示場でのかわいらしい動きなどに注目していただきたいですね」(同園広報)

 ◆ジュゴン(鳥羽水族館=三重)人魚伝説のモデルになったと言われ、浅瀬に生える海藻を餌にしている。現在はメスの「セレナ」1頭がいる。同水族館広報は「海牛類は、自然状態でも見るのが難しい。海藻を食べる姿とか、イルカとは違うかわいらしい姿が見られると思います」とアピール。海外でも、シドニー(オーストラリア)、アブダビ(UAE)でしか飼育されておらず、かなり貴重。ジュゴン自体は77年から、セレナは87年から暮らしており、38年間の飼育世界記録を更新中。

突然見られなくなることも ニュージーランドの国鳥・キウイは、天王寺動物園(大阪)で飼育されていたが、昨年最後の1羽が死に、国内の動物園からいなくなった。パンダの中国返還のように、さまざまな理由で突然見られなくなることもあるだけに、思い立ったらすぐに出掛けた方がいいかもしれない。

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