9月、世界的なビッグイベントの東京世界陸上が行われる。将来の日本代表を目指す中学生アスリートたちは今、全日本中学校陸上競技選手権(通称、全中)を目標に奮闘している。

今年の第52回大会は8月17~20日、沖縄市で開催される。

 全中は、全国の中学生陸上部員にとって「夢」であり「憧れ」だ(昔々、中学生だった私も出場を夢見たが、及ばなかった)。6~7月、各都道府県で指定された2大会で参加標準記録を突破した選手だけが全中に出場できる。

 ただ、この大会要項の参加資格には以前から疑問があった。参加標準記録にチャレンジできる機会は2大会だけにもかかわらず「追い風参考記録は対象としない」と明記されている。

 記録が公認される追い風は2・0メートル(秒速)まで。2・1メートル以上の追い風は参考記録となる。陸上競技は記録のスポーツなので、強い追い風は参考記録となることは当然だろうが、チャンスが限られた全中参加標準記録の対象大会でも参考記録として「無効」となることは中学生アスリートにプラスだろうか。

 極端な例を挙げれば、全中参加標準記録チャレンジの対象2大会で、予選を含めて、すべてのレースが追い風参考記録となった場合、全中に参加できない。強い向かい風あれば、自力で参加標準記録を突破するチャンスは残るが、2・1メートル以上の追い風が吹いてしまった場合、チャンスはゼロになる。

 20日に行われた埼玉県学校総合体育大会の3年女子100メートル決勝は、不運にも追い風2・1メートルで参考記録となった。このレースで参加標準記録を突破しても全中の出場はかなわなかった。

 運不運があることはスポーツでは避けられないし、醍醐味でもある。ただ、全中標準記録の追い風参考記録の扱いは「不運過ぎる」と感じる。特に成長途上の中学生年代の大会としては。追い風参考の条件で参加標準記録を突破した記録については、科学的なデータに基づいて追い風の数値によってタイムを換算し、それでも参加標準記録をクリアした場合、全中の出場を認める措置が検討されるべき、と考える。

 今、中学校の部活動や全国大会のあり方が議論されているが、それと現行の大会要項のあり方は別問題だろう。

 全中の主催のひとつは、日本陸上競技連盟。6月に新たなリーダーとして有森裕子会長が就任した。今度、私が感じた全中の大会要項の疑問について、有森会長のご意見を伺いたい、と思っている。(記者コラム・竹内 達朗)

編集部おすすめ