女優・吉永小百合(80)が26日、広島県民文化センターで「吉永小百合朗読会~広島への思い~」を行った。1945年生まれの吉永は、かつて被爆者の役を演じたことをきっかけに原爆詩の朗読を約40年間、ライフワークとして続けている。
約500席は満席。吉永は「今日は白が合っているのではないか」と真っ白な衣装に身を包んで登場した。「お暑い中、ようこそおいでくださいました。昨年ノーベル平和賞を被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が受賞しました。うれしいことだけれど、これからが大切だと思っています」とあいさつ。10月に広島市内での世界核被害者フォーラム開催を聞き「何かお役に立てれば」と、吉永自らこのチャリティー公演に動いたという。
「序」(峠三吉)、「生ましめんかな」(栗原貞子)、子供たちの詩などの原爆詩を読み、合唱「折り鶴」にも参加。一編終わる度、目を強く閉じ、祈るようなしぐさを見せた。教科書でも知られる「生ましめんかな」は原爆投下された夜、地下壕の被爆者が産気づき、負傷した助産師が赤ちゃんを取り上げた後、絶命する壮絶な内容だ。「この詩は実話でモデルになった方が今日も来てくださっています。
吉永は平和記念資料館(原爆資料館)の音声ガイドも担当している。関係者には「近いうちに再訪し、自分の声の至らなさをまたチェックしに来たい」とも話していたという。朗読会は1回のために、発声トレーニングなどで半月近くの準備期間を要する。今後について「私もいつまでできるか分からないけれど、続けられる限り」の気持ちは変わらない。会場では最後に「これからもしっかり生きていきましょう」と呼びかけていた。(内野 小百美)
〇…吉永に原爆を考えさせるきっかけになったのは、自身の出演作によるところが大きい。最初が渡哲也さんと共演した「愛と死の記録」(66年、蔵原惟繕監督)。終戦後の広島で、原爆症に苦しむ青年と看病する少女を描き、原爆ドームでも撮影された。一番の転機が胎内被曝(ひばく)による白血病で余命宣告された主人公を演じた「夢千代日記」(85年、浦山桐郎監督)でこの直後から朗読を開始。二宮和也と親子を演じた「母と暮せば」(15年、山田洋次監督)では長崎の原爆投下が描かれている。