女優・のん(32)が2日、東京・テアトル新宿で行われたアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)公開記念イベントに出席した。

 広島・呉に嫁いだ18歳の女の子・すずが戦火の中を懸命に生きる物語。

2016年11月に公開されて興行収入27億円の大ヒットとなり日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞などを受賞。18年にはTBS日曜劇場でドラマ化、昨年には舞台化もされた。映画は20年まで超ロングラン上映されていたが、戦後80年と、のんが声優を務めたヒロイン・すずが設定上生誕100年となる今年、5年ぶりの再上演が決定。のんは「この作品はすごく特別で、私が役者人生で欠かせない。たくさんの方に見続けていただける作品になって心からうれしいです」と喜んだ。

 この日は、公開から9年が経過していることから、のんが「物語の舞台から9年後(1954年)のすず」の立場になってトークを展開。MCから「すずさんは今、どのように暮らしていらっしゃるのでしょうか?」と聞かれると、「今は子どもが大きくなって、言うことを聞かなくて大変です」と答えた。片渕監督から「新幹線(64年開業)乗りましたか?」と質問されると「新幹線…?」と首をかしげ、作中の広島弁から標準語を話す理由には「テレビ(53年放送開始)を見ているので、標準語を覚えました」と明かし、笑いを誘った。

 「戦時下の日本で起きていた出来事を直接体験した方にお話を聞く機会が少なくなっている」と足元を見つめた、のん。「すずさんたちはこういう風に生きていたのかもしれないと思いを巡らせていくと、自分の生活の中にある幸せを感じることができる。それを尊く思えるような作品になっていたらいいな」と願った。最後は「ほいじゃあね~」と広島弁を披露した。

 この日は、20代以下の若い世代も多く来場した。片渕監督は公開当時に同作を見ていなかった人たちが数多く足を運んでくれたことに「最初の公開から9年。新しく映画館に来てくださってありがたい」と感謝しつつ、終戦から間もなく80年が経過することから「戦争中に大人だった人、戦争より一昔前に生きていた方の話を聞く機会がだいぶなくなってきたんだろうなと感じる」。同作が、今も愛されていることには「何とか(戦争の記憶を)つなぎ止めようと思って描いた作品。すずさんをのんちゃんが演じてくれたことは、意義あることだったなと思います」と振り返っていた。

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