世界的指揮者の佐渡裕さん(64)が音楽監督を務める新日本フィルハーモニー交響楽団での任期が2030年3月まで延長されることになり、発表会見が11日、楽団の本拠である東京・墨田区の「すみだトリフォニーホール」で行われた。

 23年4月に就任した第5代音楽監督の任期は27年3月までだったが、3年延長されることになり、宮内義彦理事長は「大変嬉しく、これから5年近くあるのでさらに素晴らしい楽団として多くのご支持をいただけるものと確信している」とあいさつ。

「クラシックファンが減っていると懸念されているなかで、演奏会に来てくださるお客様が増えているということは、音楽監督と団員の融合が進んでいる証拠」と話し、佐渡さんの功績を高く評価した。

 就任2年目の今年は2月に海外初遠征となるアラブ首長国連邦で公演。中東最大規模のクラシック音楽祭「アブダビフェスティバル」にピアニストの反田恭平さんとともに出演して、佐渡さんも「世界を知って感動して、大歓迎を受けた」と振り返るほどの成功を収めた。さらなる飛躍へ佐渡さんは「新日本フィルは非常に柔軟なオーケストラ。これまでとはまた違うスパイスみたいなものを加えて、まだまだいろんな可能性をもって進んでいけるのでは」と手応えと期待感を示した。

 新日本フィルからはこの日、次世代の演奏家の育成と音楽文化の発展を目指した「NJPアカデミー」の創設や、次年度シーズン定期演奏会についても記者発表された。

 佐渡さんは2022年に「すみだ音楽大使」にも就任。「すみだを音楽のまちに」という思いから新日本フィルを指揮する一方で、区内中高の吹奏楽部や管弦楽部への「アウトリーチ(訪問支援)指導」なども積極的に行っている。今年はさらに、区域の7割が廃墟となり多くの犠牲者が出た東京大空襲から80年、戦後80年の節目の年でもあることから、終戦の日を前にした12日に、区内にある東京都慰霊堂で平和祈念コンサート「平和の祈りを世界へ」をすみだトリフォニーホールなどの主催で開催、「フォーレ/レクイエム作品48」を披露する。

 演奏会を前にした思いについても佐渡さんは言葉をつないだ。「世界の中ですみだというまちは小っちゃいところかもしれないけど、そうした小さいところから祈りを込めて、たくさんの人が一度に、自分の子供や友人が一瞬にして亡くなってしまった犠牲者に手を合わせ、そんな世界は二度と起こさないでほしいという思いを捧げたい。僕ら音楽家にできるひとつの警告であり、これからの希望であると思う」。

演奏はクラシックのライブ等の配信サイト『カーテンコール』で配信される。

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