大学駅伝界には「夏を制する者が箱根を制する」という格言がある。夏合宿特集の第1弾は箱根駅伝3連覇を目指す青学大を紹介する。

8月の約3週間、長野・菅平高原で長期合宿を実施。11日に恒例の上り坂トライアルの1回目を行い、エースで主将の黒田朝日(4年)を筆頭に昨年以上の好記録を連発した。鳥井健太(3年)や黒田朝の弟の然(2年)ら箱根未経験の新戦力も続々と台頭。原晋監督(58)は「優勝を狙える選手層になってきた」と手応えを明かした。

 箱根3連覇を狙う青学大の25年度チームテーマは「王者の挑戦~俺が青学を勝たせる~」。エース級だけではなく、全員が優勝に貢献することを誓う。

 菅平高原の夏合宿では坂トライアルが2度、行われる。18キロを設定ペースで集団で走り、残り3キロ地点から競走。標高差213メートルを全力で駆け上がり、心肺機能を限界まで追い込む。11日午前6時15分、小雨が降る中、坂トライアル1回目がスタート。エースの黒田朝は、重力に逆らうように圧倒的なスピードで上り坂を駆け上がり、自身が昨年マークした「コース記録」(タイム非公表)を大きく更新した。

 2~5位には鳥井、飯田翔大(かいと、2年)、平松享祐(3年)、黒田然が続いた。

坂トライアル上位の選手は箱根で活躍することが多い。鳥井、飯田、平松、黒田然は、いずれも箱根未経験だが、今季、飛躍が期待される。

 6位以下も好記録が続出。「昨年よりもタイムがいい。箱根3連覇を目指せる選手層になってきました」と原監督は胸を張って話す。

 主将の黒田朝は「箱根駅伝優勝が今季の一番の目標です。みんなが『俺が青学を勝たせる』という責任感を持っています」と冷静に話す。黒田朝自身もエースとしての責任感と自覚を持つ。2年連続で「花の2区」を走り、2年時に区間賞。3年時は区間3位ながら従来の区間記録を超えた。5区を走れば「山の神」となる可能性を秘めているが、序盤でレースの主導権を握るために、3年連続の2区出陣が決定的だ。「区間記録(1時間5分31秒)は意識していませんが、区間記録を持つエティーリ選手(東京国際大3年)は意識しています」と表情を引き締めて話した。

 成長株のひとりの黒田然は2学年上の朝日と仲良し兄弟。「今季は5区を狙っています。兄と一緒に出られる最後の箱根で一本の同じタスキで走りたい」と弟は言葉に力を込めて話した。

前回の箱根で4区区間賞の太田蒼生、同5区区間新の若林宏樹、同6区区間新の野村昭夢ら強力な世代が卒業したが、穴は埋まりつつある。新戦力が台頭し、同8区区間賞の塩出翔太(4年)、同10区区間賞の小河原陽琉(2年)ら主力候補は順調に夏合宿のメニューを消化している。

 新春の箱根路で輝くために、夏は地道に走り込む。チームには「俺が青学を勝たせる」という気概があふれている。(竹内 達朗) 

 ◆大学駅伝チームの夏合宿 8~9月、大学の夏季休暇を利用し、長野などの高原や北海道の避暑地で合宿を行う。長野の菅平、蓼科(たてしな)、志賀、新潟の妙高などは練習環境が整っており、多くのチームが集まる。北海道では紋別市などが人気。練習量が多い日には早朝、午前、午後と3回の練習で計50キロ以上走ることも珍しくない。夏に充実した練習を積んだチームと選手が、箱根駅伝で活躍できる。

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