2日に東京・後楽園ホールで行われたプロボクシング興行に出場した2選手が硬膜下血腫で死去したことを受け、日本ボクシングコミッション(JBC)とジム会長で構成される日本プロボクシング協会(JPBA)が12日、都内で緊急会合を開催。当日体重が前日計量から10%以上増量した選手への次戦での転級命令、ハイドレーションテスト(尿比重検査)・体組成測定の導入、プロテスト受験時の頭部MRI検査、全試合会場での救急車配備、などの対策を実施する方針を確認。
相次ぐリング禍に、協会のセレス小林会長(セレススポーツジム会長)は「ボクシングに関係する者として、残念で悔しい思いです。何とか事故ゼロにするような体制を作っていきたい」と決意。加山利治事務局長(EBISU K’s BOXジム会長)は「このままではボクシングはやめたほうがいいんじゃないかというところまできている。これから事故がなくなるように協会もジムも考えながらやっていかなければいけない」と覚悟を示した。
今回の事故を受け、JBCはすでに、国内外の東洋太平洋王座戦と国内開催のWBOアジアパシフィック王座戦を12回戦から10回戦へ短縮することを決定している。
この日の会合では、新たに多くの安全対策が検討された。試合直前に水分を一気に抜いて脱水状態を作り計量後に急激に体重を戻す「水抜き」による減量が、リング禍の一因となっているとの指摘もある。現在は当日体重が8%以上増量している選手に対し階級変更勧告などを行っているが、10%以上増量した選手に対しては次戦での転級を「命令」する方針だ。JBCの安河内剛事務局長は「当日計量の結果次第では転級を命令する。強制力を持たせたルールを作って取り組んでいきたい」と説明。現役王者にも王座返上を求めるという。
元WBA世界スーパーフライ級王者の小林会長は「自分はスーパーフライ級で52・1キロだったが、いつもスパーリングをしていて55~56キロが一番調子が良かったので、試合当日もその体重までしか戻さないと決めていた。当日に体重を増やせばいいと思っている人も多いが、決してそんなことはないと思う。水分で増やすことで、逆にパフォーマンスを下げてしまうこともあると思う」と自身の経験を踏まえて話した。
さらにハイドレーションテスト(尿比重検査)・体組成測定の導入、頭部MRI検査、救急車配備のほかにも、WBCが開発したボクサー体調管理アプリ「BoxMed(ボックスメッド)」の導入、アマ・プロ合同の医事委員会の開催、大学の研究機関との提携、海外の事故防止対策の調査なども進めていくという。
小林会長は「何が正解か分からないので、考え得ることはやらなければいけない。いろんな角度から検証して、事故が少しでもゼロになるようにしていきたい」と話し、安河内事務局長は「日本で100年続いてきた競技そのものの存続、今後どうなっていくかの瀬戸際でもある」と危機感を募らせた。