卓球のWTTチャンピオンズ横浜は9日、横浜BUNTAIで女子シングルス2回戦が行われ、世界ランク6位の張本美和(木下グループ)は同13位の早田ひな(日本生命)に2―3のフルゲームの末に競り負けた。2―2の最終ゲームで4―2でリードした場面で早田が約5分間のメディカルタイムアウトを取り、中断が明けた後に流れを失った。

試合後、取材エリアで涙を浮かべ、メディカルアウトを巡る状況への疑問を呈する場面があった。大会を主催するWTTの担当者がスポーツ報知の取材に応じ、最終ゲームで起こった一連の出来事についての見解を説明した。

 張本美が抱いた疑問はこうだった。「メディカルタイムアウトを取ることに関しては私にも権利があるので、相手にも権利があると思いますし、全く意見はないです」と、早田との勝負についての異論ではないと強調。その上で大会運営側に対し「まず審判から自分に説明がなかった。審判長の方もいたのに、自分も一回『どうして?』と聞いたんですけど、あまりちゃんとした答えが返ってこなくて。相手がベンチに戻ったので、自分ももう一回ベンチに戻るかという感じでした」

 「あとは大会の治療の方がいて、そこまでは意見はないけど、途中から(相手の)自分のコーチでもある方が治療をされていたので、そこはすごく疑問に思いました。(メディカルタイムアウトの間に)アドバイスだってできるかもしれないし…。そこはすごい試合中も疑問に思いながら待っていました」

 張本美が抱いた疑問について、WTTの規定上はどうだったのか。試合は日本人の同士討ちのため、両者にベンチコーチは入っていなかった。WTTの規定では肉離れや出血など、外観でプレーができないと判断できる場合は、その場でメディカルタイムアウトが認められる。今回の場合は早田が左腕付近の痛みを審判に訴えたが、外観で判断できなかったため、WTTのドクターとフィジカルの担当者が、早田にヒアリングをするため、メディカルブレイクとした。

 これは規定で、2分とアディショナルタイム1分の最大3分間。大会運営側が必要だと判断した場合にのみ認められる。早田の症状は、本人によると2か月ほど前から、腕から手にかけての尺骨神経を圧迫し、左手の小指と薬指がしびれた状態が続いていたという。大会運営側が早田にヒアリングをした上で治療が必要だと判断し、メディカルタイムアウトを認めた。

 メディカルタイムアウトは規定では、治療を開始してから最大5分間認められている。女子日本代表スタッフで、1回戦は早田のベンチコーチを務めた岡雄介トレーナーが、ベンチの外から早田のもとに行き、治療を担当した。WTTのルールではメディカルタイムアウトの際に、治療をする担当者の規定は明記されていない。また、早田が痛みを訴えた際に、同士討ちでベンチコーチがいない中、岡氏がメディカルブレイクの前にベンチに駆け寄ったことに関してはルールに記載がない。WTT側はチーム関係者が心配し、駆け寄った行動だとの認識であるという。

 試合は5分以上中断していたが、今回はメディカルブレイクと、メディカルタイムアウトの合計で最大8分間が認められたため。張本美はその間に自分のベンチで一人、ジャージーを羽織ると椅子に座ったり、立って足を動かしたりして再開を待った。WTTの見解では、選手個人のプライバシーの観点でけがの詳細を相手選手に伝えることはないが、メディカルタイムアウトが開始された際に場内にアナウンスし、張本美に対しても伝えた認識だったという。

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