◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 文武両道。言うはやすく、実際は簡単ではない。

自分の高専時代を思い返しても、部活を終えて寮に戻った後、机に向かう気力はなかなか湧かなかった。

 今春、J1清水のGK沖悠哉(25)が早大を卒業した。鹿島に所属していた18年、人間科学部eスクールに合格。「学びたい気持ちがあった」。同じ形で早大に入学した鹿島ユースの先輩でもある日本代表DF町田浩樹(27)に感化されて挑戦し、オンライン学習で7年かけて卒業した。

 エクセルなどPCスキルに英語などの必修科目と、学ぶことは山ほどあった。「社会に出た時に必要な知識。引退後のことも考えた」。同じクラスには会社を定年退職後に入学した生徒もいた。「最初は何でだろうと思ったけど、自分も両親に『学び続けないといけない』と言われて育った。年齢は関係ないと思った」

 2年かけて執筆した卒論は「朝食と栄養」。鹿島からデータをもらい朝食の有無、何を口にしたかなどを調査。

「朝食を取っていない選手が必ずしもパフォーマンスが悪いわけではなかった。考えを固定せず、柔軟に対応していくことが大事だと思った」

 早朝、練習を終えた午後、オフに遊びに出る前と、時間を決めて勉強に向き合った。「大変だったけどやって良かった」。元日本代表の権田修一(36)が抜けた今季は正GKとして奮闘する。学生生活で学んだことがサッカーに生きる場面はあるか尋ねると「引退した時に分かるんじゃないかな」と返ってきた。二足のわらじを履いた日々を糧に、どんなキャリアを築いていくか楽しみだ。(サッカー担当・武藤 瑞基)

◆武藤 瑞基(むとう・みずき) 2009年入社。静岡支局。“卒業証書”で話題の伊東市出身。

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