静岡市は15日、JR清水駅東口近くにある製油所跡地(約14ヘクタール)を所有するENEOS(エネオス、以下エ社)と、地域づくりの推進に関する合意書を交わした。J1清水エスパルスの本拠地・アイスタの老朽化が進む中、改修か新たに建設するか、来年3月末までに決定する。
ようやく明確に、二択の状況になった。完成から34年になるアイスタの大規模改修か、新スタジアム建設か。難波市長は15日、エ社・山口敦治社長と合意書を交わした後の会見で「具体的に比較ができるという点で一歩進んでいるかな」と表現した。土地を所有するエ社と市は、田辺信宏前市長だった21年に基本合意書を締結。今回の合意書では、市が14ヘクタールの土地の一部を購入することを盛り込んでいる。これにより市が具体的に建設プランを描けるわけだ。
就任してからの難波市長の発言を追うと、慎重に進めてきたことが分かる。
▼23年4月(就任会見) 「改修案と移転案の双方を検討している段階」「スタジアム単体で考えるのではなく『まちづくり』『文化づくり』と連携した共創の視点が必要」と発言。
▼同5月(定例会見) 「清水駅東口のENEOSの土地が最有力候補地」との認識を明かし、サッカー利用だけでは採算が取れないため、民間事業者の参入を強調。
▼同12月(定例会見) 多機能なスタジアムシティーを想定し、事業規模が300億円以上の投資になると説明。
▼24年3月(定例会見) アイスタの大規模改修には30年で148億円、建て替えなら236億円と金額を示し「清水駅東口でのスタジアムを含むまちづくりに投資する方が、より大きな社会便益をもたらす」。
難波市長は15日の会見で「これで今後、具体的なスタジアムの面積、金額が検討できる」とし、アイスタ改修案を含めて、概算額を再計算する意向を示した。その上で、最も重要な要素の民間事業者の参入を求めて、来年3月までに二択から結論を出す。
今月のアウェー・清水戦に合わせて、昨年2月に開業した「エディオンピースウイング広島」を現地視察。また、サッカー場やアリーナなどを併設する「長崎スタジアムシティ」にも足を運んだ。21日の会見では約2万8000人収容の広島を念頭に「街中にある立地、3万人ぐらいの収容規模は一つのお手本」と話した。
〇…難波市長は、新スタジアム建設に至った場合、アイスタを残す考えを明かした。J1基準を満たすための大規模改修ではなく、「最低限の補修で約19億円かけて、市民利用になるか」と試算を説明。それでも当面はJリーグでも使用することから、ACLEなどの国際大会基準を満たすため、背もたれ付きの座席を大幅に増やすとして、6月に約1億8000万円の予算が計上されている。
清水・秋葉忠宏監督「スタジアムの効果って大きい。クラブがもう一個上にいくきっかけになって、日本のサッカー文化が浸透しやすくなる意味では、大きな大きなきっかけですから早くできるとうれしい。今はスタジアム単体という時代じゃない。町を挙げた改革になるといいし、稼げるスタジアムになってほしい。