放送中のNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜・前8時)で、嵩(北村匠海)の親友「健ちゃん」こと辛島健太郎を演じている俳優の高橋文哉がこのほど、取材会を行った。
健太郎は嵩と高等芸術学校時代の同級生として出会い、戦時中に陸軍で再会。
博多弁がトレードマークで、誰に対しても壁を作らないキャラクター。「心情的には何歳になっても変わらないですね。人が好きで、人たらしで、底抜けの明るさ。これは感覚的なところなんですが、心臓の位置を5センチ上げるような…。突拍子もないことを言い出しそうな空気感を出すような感じ」を心がけて役作りしてきた。
嵩役の北村匠海に対しては「こんなにもいろんな話をできる関係性になると思っていなかった。プライベートでもたくさんお世話になって、仕事でも仕事じゃない話もたくさん聞いてもらって。お話をしているときに、お芝居のことだけじゃなくてこの世界に対する熱量が見える瞬間がある」とリスペクトを口にする。「『早くその場所取りに行くんで』と言ったら『まだかな』と。ひとつ僕が見たい世界を見てらっしゃるかなというところがあるので、朝ドラで匠海くんと出会えたことは大きな柱になると思います」
6日放送の第93回で、健太郎はメイコに告白。
気鋭の若手俳優として活躍中だが、実年齢を大きく上回る役は初めて。「たぶん25歳ぐらいが(演じたなかで)一番上。等身大の役しかやったことがなかったんで、すっごいおじさんを観察するようになりましたね(笑)。現場のおじさんが疲れてきた時間帯のしぐさとか。若い人は(体を)伸ばすけど、おじさんはほぐそうとする。眼鏡の直し方ひとつとっても、若い人は真ん中を押すけど、おじさんは外側から押すな、とか。今までの引き出しでは通用しないので新しいものを取り入れている感じはすごくしていますね」
父親役も初めてだが、兄2人がすでに父となっており「おいっ子、めいっ子で0歳から5歳までコンプリートしている。仕事で5歳以下と触れ合うときにすごく有利なんです」と笑みをみせる。
大人になって改めて気づいたアンパンマンの世界観の深さ。「もう少し理解できるようになったら『あんぱん』を見てほしいなと思いますし、この歴史ある作品がどうやって作られたかなんて、僕らが子どものころは考えたこともなかった。すごいタイミングでやらせていただいているなと思います」。自身はとりわけ歌について深く感じ入ることがあったといい「4、5歳のときに見ていた風景まで覚えている。すべての世代に残り続けてきたものの基盤を描くのはステキだなと、自分が出ている出ていないは関係なく思います」
やなせさん、そして劇中の嵩が探してきた「逆転しない正義」。作中でも、目の前の人に食べ物を差し伸べるシーンがたびたび描かれてきた。「逆転しない正義」がサブタイトルとなった第59回では戦地で、健太郎が栄養失調で餓死寸前の嵩におかゆを食べさせたこともあった。
高橋自身はかつて料理人になることを夢見て調理師免許を取得。「食べてもらう」という思いについて問われると「僕個人の話をすると、自分で作って自分で食べることはあんまりなくて、自炊はそんなにしないんです。
「誰かのために」という思い。「料理だけじゃなくてお芝居をするにしても、ゴミをひとつ拾うにしても、自分が気になるから拾うというよりこのゴミでつまずく人がいるかもしれないなと思うと価値観が変わってくるなって。他人を思う気持ちがすべてだと思うので、そういう気持ちは大事にしていきたいですね」。他者への思いを持ち続けながら、俳優人生を進んでいくつもりだ。