◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 サッカー界で夏、冬にやってくる移籍市場(移籍可能期間)になると、SNS上の「移籍アカウント」が目に飛び込んでくる。「○○選手が●●に移籍」と具体的なものもあれば、「赤いクラブから元日本代表選手が退団」などと抽象的なものも。

中には数万人のフォロワーがいるアカウントも存在する。

 移籍に携わるエージェント(選手代理人)は「選手から『SNSで見たけど、この話は本当なのか』と聞かれることもある。移籍のオファーなどがクラブから届けば、当然選手には伝える。しかし、もし移籍を望んでいる選手がそんなうわさを耳にすれば、当然気になる。まったくのデマという場合も多く、困ったこともある」と明かす。

 現場レベルでは混乱を招くこともある。根も葉もないうわさを振りまき、“いいね”を狙う移籍アカウントには困りものだ。

 一方で、今やSNSでの情報発信や収集は当たり前の時代。フォロワー数が示す通り、いかにファンが選手の情報を求めているかを感じる。成熟する欧州サッカーのように、うわさを楽しむこともサッカーファンの妙味だが、取材に基づいた情報の価値は今も昔も変わらないと信じている。

 移籍は選手、クラブ、エージェントなど、さまざまな思惑が絡み合って成立する。状況も日替わりだ。

そんな複雑怪奇な世界の裏側をのぞけるのも、この仕事の醍醐(だいご)味。世の中にゴシップが拡散され、情報を見極める必要があるからこそ、本当の情報を届けたい。強く感じた今夏の移籍市場だった。(サッカー担当・金川 誉)

 ◆金川 誉(かながわ・たかし)2005年入社。W杯は14年から3大会連続で取材。

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