元星組トップスター・香寿たつきが東京・渋谷の東急シアターオーブで始まるミュージカル「エリザベート」(10月10日~11月29日)で大公妃ゾフィーを演じる。元月組トップ・涼風真世とのダブルキャスト。

ハプスブルク帝国の皇后エリザベートと黄泉の帝王トート(死)との関係を軸に、香寿は皇后の義母を勤める。

 リピーターの多い人気作。この演目で「香寿」と聞いてピンと来る人は少なくないだろう。初演から30年。香寿は宝塚の雪組時代の96年、「エリザベート」が日本で産声を上げた時を知る一人だ。苦悩する皇太子ルドルフを演じた。当時、歌に秀でた一路真輝(元雪組トップ)を筆頭に、この組しかこなせないのでは、という声すらあった。

 「懐かしいですね。確かに大変でした。不協和音が多く、譜面が間違ってるのでは、と先生に確かめに行ったりも。音をすぐ確認できるよう、みんな鍵盤(けんばん)ハーモニカを買い込んで、それでメロディーを覚えたり。あのときの稽古場の様子は忘れられないですね」。

そして「一路さんはさよなら公演で、トートという死の役をされることに驚かされ、オープニングもおどろおどろしく始まる。宝塚らしさとは違うことも多くて。初日を迎えるまで一体どうなるんだろう、と思いましたね」

 しかし96年初演の幕開きとともに、宝塚の歴史を変えただけでなく、日本を代表する名作ミュージカルとなった。そして今回。「フィナーレがつく宝塚版ではゾフィーの死などが割愛されていますが、彼女の本来の姿が伝われば。心から息子のことを思い続け、一族を守ろうと自身を律し、信念を貫いた人だったと思うので」。03年に宝塚を卒業して22年。難役を託されることが多い。繊細な歌や芝居。人一倍、深みある表現で役を造形し続ける。(内野 小百美)

 〇…エリザベート役は望海風斗(元雪組トップ)、明日海りお(元花組トップ)のダブルキャスト。経験豊富な香寿は「エリザベートの魅力を表現する上で元男役さんにしか出せないものも。

今回稽古していてそんな発見もあります」。東宝・池田篤郎演劇本部長は「東宝、宝塚ともに上演1000回を超えて愛される作品は大変希有(けう)なこと」と、いかに日本で愛されてきたかを説明。東京の後、12月から北海道、大阪、福岡でも上演される。

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