◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 ONに憧れた子供の頃、野球少年はいても野球少女はいなかった。ましてプロ野球選手に教わろうとは夢物語。

そんなことを思い出しながら9月15日にジャイアンツタウンで開催された「サンリオ ベースボールアカデミー」に足を運んだ。プロ野球OBが少年少女を教える野球教室は珍しくないが、今回は参加者203人全員が小学生女子選手で講師8人は原辰徳氏をはじめレジェンドばかり。「こんなすごい方々が女子選手を教えてくれる時代が来るとは…」と感慨に浸っていたのが全日本女子野球連盟の山田博子会長だった。

 僕が女子野球を初めて取材した2012年。日本代表はW杯3連覇を果たしながらも認知度は低く、高校全国大会の出場校は10校程度。そんな時代に競技の普及に尽力していたのが山田さんだった。04年の国際大会で通訳を務めて女子野球に関わるようになると環境整備、スポンサー集めなどに奔走。今や高校全国大会は出場校が60を超えて春は東京ドーム、夏は甲子園で決勝が行われ、高校選抜チームとイチロー氏率いる「KOBE CHIBEN」との対戦もおなじみに。それでも「今は盛り上がっているけど…」と浮かれず低年齢層の競技者増を目指す。

 女子選手対象の野球教室が増えて、プロ野球OBの指導を受けられるようになれば思い出にもなって目標にもなるはず。山田さんは「楽しさを感じて野球を続けるきっかけにしてくれれば」と選手を見つめていた。講師を務めた松井稼頭央氏も「すごいボールを投げる子がいたよ。

一人でも多く野球を続けてほしいですね」と大きな目を丸くしていた。いつか“リアル水原勇気【注】”が誕生する日が…と想像してしまった。(野球担当・秋本正己)

 【注】水島新司の漫画「野球狂の詩」などに登場する下手投げの女性プロ投手。

 ◆秋本 正己(あきもと まさみ)1989年入社。野球、相撲、女性向け特集などを担当。

編集部おすすめ