◆秋季高校野球神奈川県大会▽準決勝 法政二3―2立花学園(4日・サーティーフォー保土ケ谷)
1960年夏、61年春の甲子園を連覇し、春夏計11度の甲子園出場を誇る名門・法政二が立花学園に勝利し、1992年以来、33年ぶりの決勝進出。33年ぶりの秋季関東大会出場を決めた。
試合終了の瞬間、古豪復活をたたえる一塁側スタンドの興奮は、最高潮に達した。33年ぶりに手中に収めた秋の関東切符。だが、4番の榑松(くれまつ)正悟二塁手(2年)は地に足をつけ、落ち着いた表情で言った。
「古豪とか33年ぶりとか、あまり意識していないです。『イチからチームを作っていこう』という思いで、野球をやっています」
試合の主導権を握る一撃だった。初回2死一塁、高めストレートをフルスイングし、右越えに先制2ランをたたき込んだ。
「相手の投手がいい投手だと分かっていたので、追い込まれたら相手の投球をされるだろうと。初球から甘いストライクが来たら、打ってやろうと思っていました」。自身を中距離打者と分析し、「右中間、左中間を抜くライナーが持ち味」と語るが、さらなる可能性を感じさせる高校通算5号だった。
父・伸介さんは巨人のスカウトディレクター。逸材発掘へ全国を飛び回る。青学大時代には競争の中、東都大学リーグでDHのベストナインにも輝き、現在もチーム編成に従事する立場から「野球界で生き残っていくのは厳しい」と我が子に伝える。
絹田史郎監督も「勝負強さというか、『ここで打ってほしい』というところで、必ず一本打ってくれる。試合の流れを大きくつかんでくれた、貴重な一本」と称賛した。センバツ出場への重要な参考資料となる秋季関東大会は10月18日、山梨で開幕する。「相手がどんなピッチャーでも、自分のバッティングをしてチームに貢献できる一本を打ちたい」と榑松。強い「HOSEI」のど真ん中には、頼れるバットマンがいる。(加藤 弘士)