巨人の甲斐拓也捕手がFA移籍後1年目のシーズンを終えた。チームは11日からのクライマックスシリーズ第1ステージでDeNAに連敗。

今季の全日程を終了した。「テレビで見て応援するしかできなかった。『悔しいな』って。自分もそういった場でやりたかった」。表情に無念さをのぞかせた。

 8月23日のDeNA戦(東京ドーム)の守備で、本塁クロスプレー時に右手がヘッドスライディングした走者に巻き込まれる形となって負傷した。「右中指中手骨頭骨折」と診断され、同25日に登録抹消となった。17年に1軍定着して以降、初めての負傷による離脱。故障班でリハビリを進めてきたが、復帰は叶わなかった。

 ソフトバンクに10年育成6位で入団。17年から4年連続日本一を経験し、19年プレミア12、21年東京オリンピック、23年WBCで世界一に貢献。3ケタの背番号から這い上がり、プロ野球界の酸いも甘いも味わった男は5年総額15億円(金額は推定)の大型契約で巨人のユニホームに袖を通した。

「本当にいろいろあった1年だった。こっち(巨人)に来ないとわからないことも多かったし、セ・リーグにはセ・リーグの戦い方があると改めて感じた。今まで経験したことのないシーズンだった」。百戦錬磨のベテランは常に重圧と戦い続けた。

 今季は68試合に出場して攻守に奮闘。積極的に投手とコミュニケーションを取り、数字に表れない部分でも大きな役割を果たした。「今までやってきたことをそのまま普通にやればいいんだけれど、なかなかそれって難しい。お互い理解し合っていかないといけない中で、そこに遠慮が生まれてくることは多かった。ピッチャー一人ひとりとコミュニケーションを取っていく中で、難しいピッチャーももちろんいた」。試行錯誤を重ね、懸命に投手陣をリードした。

 「グラウンド上でのキャッチャーは監督」。入団交渉の際に、甲斐が阿部監督から授かった金言だ。

「1年やっていろいろ分かった部分もある。もう遠慮せず、僕のキャッチャースタイルとしてやっていけばいいのかな。もちろん向上しないといけない部分は多くあるので、そこはオフでしっかりやっていきたい」。この日はジャイアンツ球場で、キャッチボールやフリー打撃を行い汗を流した背番号10。不完全燃焼に終わった移籍1年目。悔しさを胸に秘め、視線はすでに来季を見据える。

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