◆第86回菊花賞・G1(10月26日、京都競馬場・芝3000メートル)

 自ら管理した母の子でG1に挑む。瀧川厩務員が担当するミラージュナイトは助手時代に手がけた14年エリザベス女王杯の勝ち馬、ラキシスの息子になる。

「種馬と違って年に1頭しか産まれない。おとなしかったラキシスの子、思い入れがあります」。21年の解散までJRA・G1・26勝など日本競馬を引っ張った角居厩舎に所属。ヴィクトワールピサやサートゥルナーリアにも携わってきた腕利きは笑顔を見せた。

 馬の個性を大切に、誰が乗っても問題ない馬を育成する。根底には「角居イズム」が流れている。それが形になったのが04年の菊花賞を勝ったデルタブルースだ。当時は地方所属だった岩田康が8か月半ぶりの騎乗だったが、好位から早めの仕掛けでねじ伏せる強気の競馬。「あれはもう、めちゃめちゃうれしかった」と人馬にとっての重賞初制覇を振り返る声は弾む。21年たった今、その教えをミラージュナイトに注ぎ込む。入厩時から大きな可能性を感じた柔軟性に秀でた体と、可動域の大きな前肢を使った走り。高い資質をさまざまな人と磨いてきた。

調教は春先に辻野調教師が、今は高田助手が担当。競馬も5人の騎手が騎乗し、さまざまな形で競馬を教えてきた。「兄姉は背中が硬いけど、この馬はやわらかい背中。本当は俺が乗りたいくらいだけどね」と笑顔で愛馬をなでた。

 母子2代に接しているからこそ、思いは強くなる。「今は中学生くらいかな。まだ体に芯が入ってなくて能力だけで走っている感じ」。緩やかな成長曲線は4歳秋のエリザベス女王杯が重賞初制覇だった母と重なる。さらに、母も所有した大島昌也オーナーにとっては今回が初のクラシック挑戦だ。「大島さんが入れてくれた馬。なんとかダービーに出してやりたかったが申し訳ない。無事にゲートまで送り届けたいですね」。

何とか間に合った3冠最終戦。多くの思いを胸に、歓喜を目指す戦いが始まる。(松ケ下 純平)

 ◆瀧川 清史(たきがわ・きよふみ)1965年9月25日、三重県生まれ。60歳。高田高(三重)出身。83年から栗東・武宏平厩舎に所属し、01年の角居勝彦厩舎開業とともに移籍。同厩舎解散後の21年3月から辻野泰之厩舎所属。23年に調教助手から厩務員。05年のマイルCS、香港マイルを制したハットトリックも管理した。

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