◆第86回菊花賞・G1(10月26日、京都競馬場・芝3000メートル、稍重)

 第86回菊花賞・G1(芝3000メートル)は26日、京都競馬場で行われた。春のクラシックを勝った2頭が不在のなか、単勝1番人気のエネルジコがG1初制覇でラスト1冠をつかんだ。

クリストフ・ルメール騎手(46)=栗東・フリー=は史上初となる同レース3連覇で、武豊騎手に並ぶ歴代最多タイの5勝目。春は重賞を勝ちながら日本ダービー出走がかなわなかった同馬を、クラシックホースへと導いた。

 またまたまた、ルメール劇場だ! 淀を覆った分厚い雲とは裏腹に、今日の主役の表情は晴れやか。エネルジコで前人未到の菊花賞3連覇を成し遂げたルメールは、馬上で「イエス!」と雄たけびを上げた。「信じられない。すごく長いレースだし、G1だし勝つためには難しい」。白い歯をのぞかせながら、喜びをかみしめた。

 マラソンレースを綿密に組み立てた。スタートでワンテンポ遅れたのは折り込み済み。「長い距離で、時間がありますので」と焦らず、後方でリズムに任せた。腕が光ったのは向こう正面の手前。武豊騎乗のマイユニバースが最後方から動き、自身の前に出た。

その瞬間を見逃さず、静かに真後ろへ。「突然外のポジションが見えたので、すぐに出しました。豊さんの後ろで、ちょうどいいと思った」。全ては思惑通りだった。

 その後も前に従いながら、流れるように進出。いつの間にか、4角では4番手の絶好位につけていた。あとは直線で思う存分はじけるだけ。稍重も苦にせず、しなやかに突き進んだ。長い長い3000メートルのレースだったが、ラストの約1ハロンは一人旅。エリキングに2馬身差をつけた完勝劇に、「スタミナがあると思っていた。先頭になったとき、絶対に勝つと思った」と鼻高々だった。

 “守りの姿勢”が実を結んだ。

エネルジコは体質が弱く、疲れが残りやすいのが課題。菊花賞まで間隔を空けることを重視し、前哨戦には異例の新潟記念(2着)を選んだ。今回も、当日の輸送時間を短くするため早めに栗東入り。高柳瑞調教師は「帰ってきたときの状態を見ると、うまくいったのかなと思います。うれしいです」とクールに喜び、安堵(あんど)した。デビュー3連勝で青葉賞を制しながら、体調が整わずに日本ダービーを自重。春は涙をのんだが、秋に大輪の菊を咲かせた。

 今後のプランは未定だが、ルメールは「2400メートルや2500メートル、2000メートル以上なら問題ない。(3200メートルも)いけるいける」と夢を描く。最初で最後のクラシックでつかんだ勲章。胸を張って、新たなステージに向かう。(水納 愛美)

 ◆エネルジコ 父ドゥラメンテ、母エノラ(父ノヴェール)。

美浦・高柳瑞樹厩舎所属の牡3歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算5戦4勝。総獲得賞金は3億1821万9000円。重賞2勝目。主な勝ち鞍は25年青葉賞。馬主は(有)シルクレーシング。

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