◆第172回天皇賞秋・G1(11月2日、東京競馬場・芝2000メートル)

 秋のG1シリーズ第4戦、第172回天皇賞・秋は11月2日、東京競馬場で行われる。昨年のドウデュースでレース歴代最多タイとなる7勝目を挙げた武豊騎手(56)=栗東・フリー=は、6月の宝塚記念を逃げ切ったメイショウタバルで参戦。

8月に亡くなった前オーナーの松本好雄さんに「いろいろと恩返しできたら」とG1連勝で天国へ最高の結果を届ける。

 勝つことが一番の恩返しだ。昨年ドウデュースで制し、連覇と保田隆芳元騎手を上回り歴代単独最多となるレース8勝目を狙う武豊が、今年はメイショウタバルと参戦する。前走の宝塚記念は7番人気の伏兵という評価だったが、ハナを切ってレースを完全に支配。終わってみれば3馬身差をつける完勝だった。

 「内容は良かったですね。少し湿った馬場で、展開も競られることがなかったです」と鞍上は逃走劇を振り返る。父・邦彦氏の頃から親交が深い、前オーナーの松本好雄氏(現在は息子の松本好隆氏名義)と、幼い頃から仲のいい石橋調教師との勝利。「オーナーと石橋さんと勝てて、うれしかったですね」と当時を思い出し、優しい笑みを浮かべた。

 2走前のドバイ・ターフ(5着)からコンビを組み、今回が3度目の騎乗。タバルの印象を「個性派ですね。難しい馬だけど、ポテンシャルは高い。

勝つときは圧勝するからね。打率の低いホームランバッターみたいで、つかみどころがない(笑)」と表現する。2戦とも息の合った逃げを打っており、今回も自然とハナを切る形になりそうだ。

 ただ、天皇賞・秋は芝2000メートルで施行されるようになった1984年以降、逃げ切りは87年のニッポーテイオーのみ。逃げ馬には厳しい舞台となっており「直線も長いし、よほどの馬でないと逃げ切れない」とレジェンドは思案するが、宝塚記念のように完璧なペース配分ができれば可能性は十分にある。

 前オーナーの松本好雄氏は8月29日に亡くなった。「ショックでしたけど、この天皇賞・秋で結果を出して、色々と恩返しできたらいいですね」と前を向いた第一人者。07年にメイショウサムソンを勝利に導いた府中の2000メートル。同じ勝負服で、大きなアーチを描く。(山下 優)

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