巨人の阿部慎之助監督(46)が3日、GタウンスタジアムとG球場室内練習場で行う若手主体の秋季キャンプで紅白戦を実施する意向を示した。8、12日に2試合を予定。

日々、取り組む小技を絡めて1点をもぎ取る攻撃を積極的にテストする。前日2日にはドジャースが世界一に輝いたワールドシリーズをテレビ観戦し、本塁打の重要性も再確認。小技と力強い打撃の“緩急剛柔”を実現すべく、野手陣は徹底的にバットを振り込んだ。

 巨人ナインも注目したドジャースの世界一から一夜明け、Gタウンは活気があった。冷たい北風が吹き荒れる中、秋季キャンプ第2クール初日も若手が元気に猛練習。阿部監督は投手陣に地獄のアメリカンノックを打ち、左右に打球を振って走らせた。鍛錬の成果を試す場として「予定しようかなと思っています。紅白戦みたいな感じ」と8、12日に2試合を組んだ。

 秋の紅白戦は23年10月の監督就任以来初めて。練習量の確保をテーマに掲げる中で、自身の現状を確認する狙いがある。さらに「作戦をちょっと多めにやってみたりしようかな」とも明かし、細かい攻撃を積極的に試みる考えも示した。

 今季はチーム打率2割5分、1198安打がともにリーグ1位ながら、同3位の463得点に終わった。

今オフは主砲の岡本がポスティングでメジャー挑戦。得点力アップへ、秋季キャンプではヒットエンドラン、バスターエンドラン、スクイズ、盗塁、重盗など、さまざまな攻撃パターンを毎日反復練習している。紅白戦ではそのテストも兼ねて仕掛け合いになりそうだ。

 スモールベースボールだけではなく、理想は柔軟な攻撃だ。ワールドシリーズ第7戦は9回に9番・ロハスが同点ソロ。11回にスミスが決勝ソロを放った。2日は巨人は休養日で、選手だけでなく阿部監督も「見てたよ。すごいね」と激戦をテレビ観戦。「ホームランはやっぱりでかい。やっぱホームランで決まるんだなと思って見ていた」と本塁打の威力を再確認した。

 ロハスのように、長打を量産するタイプではなくても、時には一発の可能性を秘める打者が下位打線にいれば攻撃の幅は広がる。「日本シリーズもソフトバンクとタイガース、決まったのはホームラン。

やっぱり大きい」。個々が少しでも打撃の力強さに磨きをかけようと、この日もたっぷりバットを振り込んだ。

 巨人は1956年と66年に日米野球で来日したドジャースと対戦。56年は1勝3敗と完敗し、61年にはドジャースのキャンプ地の米ベロビーチでのキャンプが実現した。攻守で緻密(ちみつ)なプレーを重視する「ドジャースの戦法」を巨人が参考にして、65年からの9年連続日本一「V9」の土台を築いた。

 今年3月には日本での開幕戦で来日したドジャースと東京Dで親善試合を行い1―5で敗戦。世界トップレベルを体感した。「素晴らしいチームと試合をさせていただいてありがたかった。球団史上初のワールドシリーズ連覇。あの盛り上がりようも素晴らしいなと思った」。大谷、山本、佐々木も躍動して偉業達成。舞台は違うが、究極の理想はドジャースのような小技も大技もできる野球だ。

 1年後の秋は巨人が日本一になって歓喜したい。地獄の秋の最中に行う2試合の紅白戦は、その第一歩になる。(片岡 優帆)

 〇…オーストラリアのウィンターリーグに参加する石塚、荒巻、代木、田村は、5日に出発のため紅白戦は参加しない。ファーム首脳陣が指揮する、午前G球場室内、午後Gタウンで練習の「午後組」からも一部選手が参加する。若手はこの日も午前9時から午後5時まで8時間猛練習した。

 ◆巨人とドジャース ドジャースの野球は巨人に大きな影響を与えてきた。1961年に巨人は川上哲治新監督のもと、初めてドジャースのキャンプ地である米フロリダ州ベロビーチで春季キャンプを張り、本場のプレーを吸収。川上監督らは元ド軍の選手でもあったアル・キャンパニスの書いた野球指南書「ドジャースの戦法」を徹底的に研究して最先端のチームプレーを完成させ、のちのV9へとつなげた。

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