日米通算4367安打を記録したイチロー氏(52)=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が8、9日の2日間、新潟・長岡市内で春夏通算12度の甲子園出場を誇る中越の球児らを中心に指導を行った。高校生の指導は20年の智弁和歌山から始まり、これで6年連続12校目。

今年1月に同校生徒から受け取った手紙がきっかけで実現した指導は2日間にわたり、数々の金言を授けた。

 初日の8日は、同市にある悠久山野球場で行われた。93年6月12日の近鉄戦で、野茂英雄からプロ初本塁打を放った思い出の地だ。球場玄関に飾られた当時の写真や鈴木表記の新聞記事も目にした。「おもしろいね。鈴木と見ると、おかしい、ってなってくる」と笑いつつ「野茂さんのフォークは打てない。(当時の自分に)初球からフォークを投げてこないと思っていた。(打ったのは)初球の真っすぐ」と当時を回顧。「追い込まれたらベストピッチを待つ」という考えも、この野茂氏との対戦で生まれたという。

 キャッチボールでは正確さの重要性を説き、打撃練習では実演を示し、63スイングで右越えに9本のサク越えを放った。「どの動きでも、走っているときも、しんどくなった時がポイント」と自身の考えを示すと「自分の頑張れるところよりも一歩前に行けるか。それを日々のテーマにしてください」と“イチ流”のアドバイスを送った。

 同校グラウンドに場所を移した2日目の練習では、屋外での練習後、1時間以上にわたる座学を行い、独自の野球観や人生観、精神論などを伝授した。生徒から「今までで一番うれしかった瞬間」を問われた際には、19年3月に行われた自身の引退試合を挙げ「プロに入ると、敵(チームのファン)もいるから360度から応援してもらえない。でも、引退試合だけは360度から応援してもらった」と懐かしそうに振り返った。

 全ての練習を終えると「どこに行っても夏の試合は見られる。みんなの今後に期待します。僕も鍛錬を続けます」とエールを送り、思い出の地・長岡を後にした。

 〇…8日にはイチロー氏にとって初となる連合チームへの指導を行った。中越と共に参加したのは5校連合の糸魚川白嶺、高田商、新井、柏崎常磐、柏崎総合の18選手。「なかなか難しいよね。モチベーションをどこに持って行くか分からない」と心情を察した。全国的に増えているという現状を指摘した上で「臨んでいく気持ちを大事にしてください」とエールを送った。

 ◇イチロー氏が指導に訪れた高校

智弁和歌山(和歌山) 20年12月

国学院久我山(東京) 21年11月

千葉明徳(千葉) 21年12月

高松商(香川) 21年12月

新宿(東京) 22年11月

富士(静岡) 22年12月

旭川東(北海道) 23年11月

宮古(沖縄) 23年12月

大冠(大阪) 24年11月

岐阜(岐阜) 24年11月

愛工大名電(愛知) 24年11月

中越(新潟) 25年11月

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