今年のマイルCS・G1(11月23日、京都競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・08年のブルーメンブラット勝利を振り返る。

 牝馬が14年ぶりの王座に就いた。インから鋭く伸びたブルーメンブラット(吉田豊)が、1番人気のスーパーホーネットの猛追をしのいでG1初制覇を果たした。マイル王を決める最高の舞台で、一流の牡馬を相手に光り輝いた。道中は中団の内。ブルーメンブラットは窮屈なポジションにいても、ジッと脚をためていた。直線も進路を変えることなく、インから一気に先頭だ。

 吉田豊には、大外から迫るスーパーホーネットの動きがしっかりと見えていた。「この馬をかわせば勝てると思った」メンバー最速タイの上がり3ハロン33秒9の末脚で、最大のライバルを3/4馬身しのいでG1初制覇だ。ゴールの瞬間、派手なガッツポーズはなくても、心の底から感激をかみしめていた。

 石坂調教師の勇気ある決断が勝利を呼び込んだ。エリザベス女王杯に登録したが、信念を貫いて牡馬との対決を選んだ。「適性距離を使わないと、馬がかわいそう。

かなりハードにやってきたのにプラス10キロ。太くは見えないのに『えっ?』と思った。これがパワーアップの証しなのかな」オークスでは、競走中止の馬のあおりを受けて9着。秋華賞でも8着。3歳時は大舞台で結果を残せなかった。07年5月、安藤調教師の勇退によって石坂厩舎に移籍。曲折がありながらも徐々に力をつけていった。

 ブルーメンブラットは、このレースをもって競走馬を引退。繁殖牝馬となりシュトラウス(23年東京スポーツ杯2歳S勝ち馬)などを産んだ。

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