6月3日に亡くなった長嶋茂雄さんをしのぶ「ミスタージャイアンツ 長嶋茂雄 お別れの会」が21日、東京ドームで開催された。

 王貞治さん、松井秀喜さんに続いて長嶋さんと古くから親交があった北大路欣也が登壇、長く続いた親交を明かしながら、お別れの言葉をつむいだ。

【北大路欣也 お別れの言葉全文】

 長嶋茂雄さんとの素晴らしい出会いの中で、多くの思い出を作ってくださいました。野球ファンのひとりとして幸せです。

 私にとって、忘れることができないのが、12時間ドラマ「宮本武蔵」に挑戦をさせていただいたときのことです。放映のあとに、その3日後に長嶋さんからお手紙が届きました。今ここにあります。読ませてください。

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 さて、突然このような手紙をお届けして驚かれたと思いますが、新春2日、貴兄の「宮本武蔵」を拝見し、懐かしさとともに大いに感動して、あまりに筆を取った次第です。本年の「宮本武蔵」には心から感銘しました。まさに、武蔵を演じては北大路さんをもって白眉とする、という思いでした。

 小生も学生時代から武蔵には大いに興味を抱き、野球の技を磨く上で参考になればという思いもあって「五輪書」を愛読してきました。武蔵の生き方について、自分なりの考えも抱いておりますが、今回のドラマで貴兄が演じられた武蔵は、これぞ素顔の武蔵というべきもので、純粋な武蔵を演じられている点で格別に感慨の深いものでした。

 なによりも、懐が深く、格段の集中力で武蔵を演じきった技が、人間・武蔵をくっきりと浮き彫りにしておりました。

随所に「武蔵は俺なんだ」という気概が画面からにじみ出てきて、最後までテレビの前から離れることができなかった次第です。心の糧になるようなドラマを拝見し、感動を抑えきれず、筆をとってしまいました。ご多幸を祈念しております。

1990年1月6日 長嶋茂雄

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 いやあ、本当に驚きました。すぐにスタッフの皆さんに報告して、この喜びを分かち合いました。私はこのお手紙を受け取ったとき、大きく、心を揺さぶられました。そのあとも、多くの作品と向き合いますが、いつもこのお手紙が私の背中を静かに押してくれました。いや、今も押してくれています。

 今日こうして、この場に立たせていただけたのは、長嶋さんとの心の懸け橋となってくださった、三奈さんの優しい思いやりのおかげです。

 そして本年、2月20日のお誕生日にいただいたお手紙があります。そこには

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 小生、本年で89歳になりました。いろいろ体験してきましたが、一つだけしっかりと体にしみこんでいるものは「野球魂」でしょうか。

誕生してから89年目。本年は「野球年」ということになります。夢中で取り組んできた野球人生で、野球年を迎えられたことを何か、誇らしい気持ちになりました。

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 とあります。

 私には強く響きました。89。役者人生、役者魂…。光をもらったような気がします。私もその役者魂に手が届くまで、懸命に努めます。

 いつも温かく接してくださいました。そして私たち夫婦をも励ましてくださいました。長嶋さん。

私たちの長嶋さんへの感謝の思いは、永遠です。ありがとうございました。

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