2歳のマイル王者を決める第77回朝日杯FS・G1は21日、阪神・芝1600メートルで行われる。アドマイヤクワッズを出走させる友道康夫調教師(62)=栗東=は、連覇と自ら最多を更新するレース4勝目がかかる。

これまで出走のべ6頭で3勝。驚異の成績を生んだのは、同師の馬づくりへの深い理念だった。ヤマタケ(山本武志)記者が読み解く。

 友道厩舎といえば中長距離。競馬界では“常識”だろう。実際にJRA重賞78勝中、約8割の62勝が9ハロン以上。だからこそ、朝日杯FSで史上最多の3勝を挙げているのは正直、違和感しかない。「マイルはそんなに成績を残してないから、正直ピンとこない」と友道調教師も苦笑いを浮かべる。

 大きな転機は小回りに近い中山から広い阪神の外回りマイルに舞台を移した14年だ。14年からの11年で6頭が出走しているが、02年の開業から13年まではわずかに1頭だけ。「中山のマイルは自分ではどうしようもない枠順で結果も大きく違ってくる。トリッキーだから負担も大きい」と積極的な起用は避けてきた。

 24年のみ京都外回りだが、広いコースに替わってからは【3012】と抜群の成績。ただ、G1だけではない。21年以降の阪神外回りで33勝&60連対は断トツ。大きな要因の一つが調教だ。栗東で負荷をかける調教は1085メートルの坂路ではなく、1周1800メートルで幅の広いCWコースでほぼ行う。「その影響はあると思うよ。坂路ばかりで走るとピッチ走法になりやすいしね」。広さを味方につける下地はできている。

 自らの理念にも合う。常に視線の先に見据えるのは来春のクラシック路線だ。「広くて大きな外回りなら、1800~2000メートルの馬でも対応できる。直線の長いコースの方が紛れないし、力通りに走れるから」。

マイルでも外回りならスピード色には偏らず、日本ダービーへと続く道を遮らない。むしろ強敵相手にもまれて得られる経験値は貴重だ。実際に21年の勝ち馬ドウデュースは翌年の祭典で頂点に立った。

 自らの記録を更新する4勝目を狙うのはアドマイヤクワッズ。広い東京でデビューVを飾り、京都外回りのデイリー杯2歳Sで重賞初制覇。広いコースで“英才教育”を続けてきた。「早い段階からここ目標だったし、来年もまず皐月賞までは行こうという話になっています。使うたびに良くなっているし、京都より阪神の方がいいんじゃないかな」。気負いは全くない。令和の朝日杯マスターは勝ち方を知っている。(山本 武志)

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