◆第70回有馬記念・G1(12月28日、中山競馬場・芝2500メートル)

 右手に太平洋、左手には広大な牧場が次々と目に飛び込んでくる。37年前、卒業旅行で友人がつきあってくれた無計画の北海道旅行だった。

日高本線に揺られてたどりついた新冠の明和牧場。見学させてもらったハイセイコーが旅立ってから、すでに四半世紀が過ぎた。

 日高と聞くと、その当時の風景がよみがえる。まぎれもないサラブレッドの故郷である。ただ、2017年のキタサンブラックを最後に、日高生まれの有馬覇者は誕生していない。社台グループが腰を据える胆振(いぶり)・千歳地方から優勝馬が輩出されるのは時代の流れとはいえ、一抹の寂しさを感じさせる。

 88、90年のチャンピオン、オグリキャップは三石(現・新ひだか町)、93年の優勝馬トウカイテイオーは新冠で、この世に生を受けた。30年以上が経過しても色あせることのない、日高が生んだスーパーホースたちだ。今年の代表は上半期のグランプリホース、メイショウタバルで、鞍上には武豊騎手。くさびを打ち込むには、これ以上ない役者が、心を揺さぶるドラマを見せてくれる。(吉田 哲也)

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