馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はハープスターが勝った2014年の桜花賞を取り上げる。

単勝1・2倍と圧倒的1番人気に推されたディープインパクト産駒が最後の直線で17頭をごぼう抜き。豪快な勝ちっぷりは今も語り継がれている。

 直線入り口。詰めかけた5万人近くの観衆がどよめいた。ラスト300メートルを迎えても、ハープスターはまだ最後方。大逃げを打ったフクノドリームとは10馬身以上の開きがあった。

 しかし、鞍上の川田が右ステッキを何度も振り下ろすと、グングン加速してトップスピードへ。ラスト600メートルは驚がくの32秒9。阪神競馬場が改装後の07年以降では、09年に優勝した“先輩”ブエナビスタの33秒3を上回る桜花賞史上最速の切れ。他馬が止まって見えるような次元の違う脚で、17頭を豪快にのみ込んだ。

 首差で射止めた1冠目。「最高にうれしいです」。

1993年ベガ、2009年ブエナビスタ、2011年マルセリーナに続く4勝目に、松田博調教師は目尻を下げた。周囲をハラハラさせたが、「(前が離れているのは)気にならんかったな」。愛馬への信頼は最後まで揺るがなかった。

 着差以上の勝ちっぷりに、馬主キャロットファームの代表である手嶋龍一氏(64)は「パリに行きましょう!」と、凱旋門賞挑戦を力強く宣言。「こんなチャンスはもうない。凱旋門賞はノーザンファームの夢。ベガによって今日のノーザンファームがあるんですから」と期待を膨らませた。

 「俺を男にしてくれた馬」。松田師が深く思いを寄せるベガ。桜花賞、オークスを制した2冠牝馬が馬主や生産者との人脈をつなぎ、名門へ上り詰めた。そして、2016年2月の定年を前に、その孫が大きな夢をつないでいく。「(ベガは)おとなしくて、こういう馬が海外に行ったらいいんやろうなと思ってた。

ハープはベガよりカイバ食いがいいし、もっといいやろな」。祖母は爪の不安で海外遠征は実現しなかったが、ハープスターは3歳牝馬としては日本調教馬で初めて、世界最高峰の一戦を目指す。

 これで8頭の牝馬でG1勝利を挙げた名伯楽は賛辞を惜しまない。「特別だと思うのは一瞬のスピード。ブエナビスタと比較はできないけど、扱いやすさとトップスピードは上」と、G1・6勝の名牝を超える最上級の評価を与えた。次走はオークス(5月25日、東京)が有力。ロンシャンへつながる府中の滑走路を華麗に羽ばたいてみせる。

 続くオークスではヌーヴォレコルトの強襲でまさかの2着。古馬の牡馬相手となった札幌記念を勝った後、凱旋門賞には挑戦したが、後方からの追い込みも届かずに6着だった。その後は勝ち切れず、4歳春には右前脚の故障が発覚。現役引退が決まり、あっという間に駆け抜けた現役生活を終えた。

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