スポーツ報知ではアマチュア野球界の指導者が持つ育成論、指導論に迫るインタビュー「野球導」がスタートする。第1回は関西国際大の監督で、昨年12月に大学侍ジャパンの監督に就任した鈴木英之監督(59)。
1999年から、人生の半分近くを指導者として過ごしてきた鈴木監督。指導理論の軸は、競争意識だ。
「常に切磋琢磨(せっさたくま)して、競わせるということです。競争することによって、お互いの成長につながってくれることが一番。競争を促すような選手起用、ミーティングは意識しています」
これは全盛期のPL学園で過ごした影響が大きい。1学年下には清原和博、桑田真澄らがいた。自身も春夏の甲子園で優勝1回、準優勝2回を経験した。
「原点はPL学園でのレギュラー争いです。当時は先輩にも後輩にもスーパースターばかりで、競争心は本当にすごかった。
選手との関係では、壁を作らないことを重視する。
「まず自分をさらけ出すこと。監督だからといって距離を取るより、選手と同じ目線で話をする。自分もこんな失敗をしたよ、などは隠しません」
98年秋に神戸製鋼の監督に就任。当時は指導者を目指す気持ちはなかった。
「会社の辞令なので、全く興味がなかった。選手として10年連続で都市対抗出場を達成したのが98年。その秋に『お前が監督だ』と。思わず『ええ!?』と言いましたよ」
神戸製鋼では休部までの4年間指揮を執り、03年に新興校だった関西国際大の監督に就任した。
「『さあ、これからだ』という時に野球部がなくなってしまった。不完全燃焼で、まだ勝負してみたい気持ちになったんです」
社会人野球で培った経験は大学生への指導にも生かされた。
「何千万円も会社の予算を使って、従業員が仕事をしている間に野球をさせてもらっている。そう考えれば送りバント一つでも命がけ。一つの失敗で一年間のみんなの苦労がパーになる。そういった責任感の強さを、大学生にも植え付けたい思いが一番でした」
指導に生きるヒントは野球界以外からも得ている。
「経営者の方や会社の役員さんとは、学生の就職も含めてお付き合いさせていただくケースが多いです。そういった方々が言われるのは、全体を見ているということです。教え子にBMWを日本で一番売った子がいますが、営業マンも周りに対する気配り、目配りがすごい。彼は『お客様に頼まれたことに対して、絶対ノーとは言いません』と。だから営業成績を上げることができるんやな…と教えられたりします」
他業種から得た知見も、積極的に選手に還元する。
「僕らがこの年になって気づいたことを、20歳前後の彼らが分かればこんなに素晴らしいことはない。何でも情報が得られる時代だからこそ、広く視野を持った方がいい。選手がよく冗談で『監督は雑談が1時間になる』と言いますよ(笑)」
技術面では、自分が何を求められているのかを理解する大切さを説いてきた。
「ゲームの中での目配り気配り、要するにサービス精神。常日頃から相手をどうやってもてなし、喜んでいただくかを考えていたら、野球でも気の利いたプレーができるようになる。そういう選手が増えるほど強いチームになって、つながっていくと思うんです」
試合では、選手からの見え方に細心の注意を払う。
「負けている時の方が笑顔でいるようにしています。『監督が緊張している』とか、『負けていてバタバタしている』と選手には悟らせてはいけない。内心ではそうなってるのかもしれないですけど、『負けていてもこんなに余裕があるんや』と感じられるように。そういった意味では、さらけ出すのとは真逆になるんです」
昨年12月に大学日本代表の監督に就任。過去、コーチとして3人の監督(善波達也監督、横井人輝監督、大久保哲也監督)を支えた実績等が評価されての打診だったが、悩んだ末の就任だった。
「3人の監督さんの苦労を一番近いところで見てきました。どれだけ大変かは日本中の大学監督の誰よりも分かってるつもりでしたから、すごく葛藤がありました。そのときに(母校)駒沢大学の恩師・太田(誠)監督の『覚悟に勝る決断はなし』という言葉を思い出し、決めました」
代表監督の重圧を物語る、忘れられない出来事がある。
「13年に善波監督(元明大監督)が松山開催の日米野球を率いられていて、無事に3勝2敗で勝ち越しました。
大学日本代表は7月に台湾で行われる「ワールドカレッジベースボールチャンピオンシップ(仮称)」に出場し、米国、台湾、韓国と対戦。関西国際大は4日に阪神大学野球春季リーグ戦が開幕した。指揮官が描く、それぞれの目標とは。
「敵地で勝つことはやはり難しい。だからこそ、しっかりとみんなの能力を出せるようにして優勝を目指したい。自分のチームでは、優勝や勝つことは結果論。むしろ、モラルとかをなし崩しにしてまで勝つ必要はないと伝えています。正々堂々と、相手に敬意を持って戦う中で勝つことによって成功体験をさせてあげたい。その後の人生の方が間違いなく長いので、そこで役に立つ教育、指導をやっていきたい」
グラウンドに向かう選手に、「腹をくくれ」と声をかけて送り出すのが“鈴木流”。自身もその決意で、重責を全うするつもりだ。
「覚悟はしないといけないポジションにいる。
【取材後記】
大学日本代表には全国から選ばれた20数名が集結する。技術的に優れる選手がそろう中、機能するチームになるカギは「結束力。短期間で一つになれるか」と鈴木監督は分析する。3月にWBCに臨んだ侍ジャパンのように、過去には決起集会を行うこともあったという。
指揮官が重要視するのは、日の丸を背負う意味を理解することだ。「僕が初めてコーチになった時、団長の国際武道大の岩井(美樹)さん(同大監督)は、『日の丸を背負っている以上、ユニホームを脱いだ時でもジャパンの選手たる人格、品格、毅然(きぜん)とした態度も大事だ』と話されていました。プライドはしっかりと持ち、日の丸の下に結束することが一番」。経験豊富な指揮官は、どんなチームを作り上げるのか。
◆鈴木 英之(すずき・ひでゆき)1967年3月8日、大阪府生まれ。59歳。PL学園では2年夏にベンチ入りで優勝、3年は春夏連続甲子園準優勝。駒大を経て、卒業後は社会人野球の神戸製鋼でプレー。98年まで10年間プレーし、99年から2002年までの4年間は監督。03年関西国際大監督に就任し、巨人・大勢、ロッテ・益田らをプロに導いた。昨年12月に大学日本代表監督に就任。左投左打。好きな言葉は「球道即人道」。










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