大相撲の関脇・若隆景(31)=荒汐=が名古屋場所(12日初日・IGアリーナ)を休場することが6日、決まった。師匠の荒汐親方(元幕内・蒼国来)が明らかにした。

先場所で2度目の優勝を果たし、今場所は大関昇進への足場固めが期待されていたが、1日の稽古で左太ももを負傷。血行障害で神経まひなどを引き起こす「コンパートメント症候群」と診断され、壊死(えし)の恐れもあったことから緊急手術を受け、現在も入院中。復帰のメドは立っておらず、長期離脱の可能性も出てきた。

 先場所覇者が悲運に見舞われた。師匠の荒汐親方が名古屋市中川区の部屋宿舎で朝稽古後の取材に応じ、2日から稽古場に姿を見せていなかった若隆景の現状を説明。左太ももの手術を受けて入院中で「名古屋は無理でしょう。大きなけがなので、まずは治療に専念させたい」とし、名古屋場所の休場が決まった。

 異変が起きたのは佐渡ケ嶽部屋に出稽古した1日だった。左脚に違和感を訴えて申し合い稽古を途中で切り上げた。当初は自力で歩行できる状態だったが、部屋に戻った正午頃に風呂場で痛みを訴え、午後3時頃に激痛と嘔吐(おうと)の症状があったため、救急車で市内の病院に搬送。「大腿(だいたい)コンパートメント症候群」の診断で、すぐに緊急手術を受けた。

 約3時間の手術後、深夜に出血が止まらなくなり、早朝の再度の手術も2時間に及んだ。

4日まで集中治療室に入っていたが、現在は一般の病棟へ移り、容体は安定。医師の迅速な判断が功を奏したが、切開部は7日以降に複数回の縫合手術を受ける予定。退院のメドは立っていないという。

 「コンパートメント症候群」は、外傷などを原因とする血行障害で神経まひなどを引き起こす。荒汐親方によると、10万人に1~2人程度の珍しい症例。患部の多くはふくらはぎで、太ももは珍しい。処置が遅れれば筋肉や組織が壊死して機能障害に至る恐れがあり「(医師に)時間との勝負と言われた。手術があと1~2時間遅れれば危険だった」と証言した。

 若隆景は小結の先場所、12勝3敗で大関・霧島との決定戦を制し、25場所ぶり2度目の賜杯を抱いた。大関昇進への目安は「三役で直近3場所33勝」。5場所ぶりに関脇に復帰した今場所で悲願の大関昇進への足場固めを狙っていたが、振り出しに戻ったばかりか、一転して長期離脱となる可能性も出てきた。

 角界での症例も限られ、復帰に向けて困難な道のりが予想される。

力士生命の危機ともいえる事態だが、師匠には電話で「治療に専念して頑張ります」と再起への決意を伝えていたという。右膝の大けがで関脇から幕下に転落しながら、はい上がった不屈の31歳。再び試練を乗り越え、奇跡を起こせるか。(林 直史)

 ◆若隆景 渥(わかたかかげ・あつし)本名・大波渥。1994年12月6日、福島市生まれ。31歳。小1で本格的に相撲を始め、学法福島、東洋大を経て荒汐部屋から17年春場所で初土俵。19年九州場所で新入幕。22年春場所で初V。技能賞7回、殊勲賞1回。祖父は元小結・若葉山、父は元幕下・若信夫、長兄は元幕下・若隆元、次兄は幕内・若元春。得意は右四つ、寄り。

183センチ、138キロ。

 ◇若隆景の初優勝以降の道のり

 ▽22年春場所(関脇) 12勝3敗で並んでいた高安を優勝決定戦で破る

 ▽同12月 年間最多勝(57勝)などが評価され、初の報知年間最優秀力士賞

 ▽23年春場所(関脇) 右膝前十字靱帯損傷、右外側半月板損傷などの大けがで途中休場。手術して以降は3場所連続の全休

 ▽同九州場所(東幕下6枚目) 再起して5勝2敗

 ▽25年秋場所(関脇) 大関取りに挑むも首を痛めて6勝9敗と負け越し

 ▽26年春場所(東前頭筆頭) 8勝後に右肘痛が悪化して途中休場

 ▽同夏場所(小結) 三役返り咲き場所で2度目の優勝

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