欧州連合(運営:ソペクサ・ジャパン)は10月23日、都内で「EUセミナー&ネットワーキングレセプション~ヨーロッパ産肉の可能性~」を開き、EUのGI保護制度についてのプレゼンテーションなどを通じ、日本市場におけるヨーロッパ産肉の今後の可能性をアピールした。

冒頭、駐日欧州連合代表部通商部の小林恵上席通商担当官が、EUの地理的表示やGI保護制度、欧州産食肉の供給状況などについて説明した。
それによると、EUの農産食品貿易において日本は世界第5位の輸出相手国で、非常に重要な市場であるとし、対日食品輸出額のうち、豚肉が18%(たばこ葉・葉巻・紙巻たばこ17%、ワインおよびワイン使用製品13%)を占めているという。

こうしたなか、EUでは2012年に品質認証制度を導入し、特定の地域で生産・加工された農産物が特定の品質や特徴を持つ場合、その名称に「地理的表示保護(PGI)」「原産地呼称保護(PDO)」といった地理的表示(GI)を付与し、その名称を保護することで、農産物の価値を高めていると説明。また、有機認証制度では、その製品がEUの有機食品生産規則に準拠していることを示しており、有機食品や飲料には「ユーロリーフ」と呼ばれるロゴマークが付けられるとした。

小林氏は地理的表示(GI)について、GI保護を受けた産品の価格は、一般製品と比べて平均2倍の価格となり、生産者により良いマーケティング機会と有利な価格設定をもたらすと強調し、これに加え、指定地域のすべての生産者がGI名称を使用できるため集団的権利が得られること、名称の不正使用や模倣に対する強力な保護があるなど、生産者の利益も確保しているものだとした。その一方で、世界の消費者に対しても、GI産品の特性や品質に関する情報提供を通じ、品質の指定により食品の画一化を防ぐことで、より幅広い選択肢を提供できるとした。

また、EU産食品を輸入するメリットとして、日EU・EPAによる関税の削減に加え、SPS(衛生植物検疫措置)に関する対話によってマーケットアクセスを広げ、非関税障壁を取り除いていることを挙げ、EU側からは▽アニマルウェルフェア関連を含む、世界最高水準のSPS基準▽HACCPに基づく管理▽成長促進剤(ホルモン剤)使用の制限▽EUならではの、食品事業者と農業従事者に対する高度な監査・管理・検査システム――などの食品生産基準が多くのメリットをもたらすと説明した。


さらに、EUでは「欧州グリーン・ディール」の一環として、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略を掲げるとともに、持続可能な食料生産のための2030年目標では、化学農薬・殺虫剤の使用量削減、畜産・水産養殖用の抗菌剤の販売削減などを掲げるほか、薬剤耐性の削減にも取り組んでいることを紹介した。

〈付加価値訴求、イメージの確立が必要〉


その後、(株)協同インターナショナルの池田伸敏常務取締役、イノーバマーケットインサイツジャパンの田中良介カントリーマネージャー、ラ・ビスボッチャの井上裕基シェフによるパネルディスカッションを実施。ここで、池田氏は欧州産食肉の輸入状況などを説明した上で、「牛肉や鶏肉など日本市場での取扱いはまだまだ少ないが、アニマルウェルフェアや安全性など、欧州産食肉が持つストーリー性や付加価値を訴求していくことで、今後、マーケット拡大の可能性がある」と強調した。

一方、田中氏は、日本市場において欧州産食肉のイメージが確立していないことを課題に挙げ、「〈1〉伝統や技術、生産手法〈2〉国・地域ごとの多様性〈3〉トレーサビリティによる透明性の確保〈4〉サステナビリティへの先進的な取組み〈5〉高品質なプレミアム感――といった訴求ポイントをしっかりとPRし、イメージを確立していくことが重要。GI保護制度といった認証制度についても、日本での認知度を高めていく必要がある」と指摘した。