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スタートアップ界隈のニュースを見る人、ゲームをする人であれば、ミラティブという企業を知っているのではないだろうか。Nextメルカリとして非常に注目されているスタートアップであり、そのユーザー数はすでに数百万人を超える。

同社はDeNAの一事業として生まれ、10億円の資金調達とMBOの後、わずか1年以内で35億円もの追加大型調達に成功。このスピード感での大型調達は確かにメルカリ級である。

ただ、一方で、なぜミラティブがスタートアップ界隈で注目をされているのか。スマホライブ配信サービスに馴染みの少ない人も多く、Nextメルカリとの呼び名に違和感を覚える人もいるはず。

そこで本記事では、ミラティブの簡単なサービスの特徴を含めて、注目される理由を紐解いていく。

ゲーム実況に強みをもつ、スマホ特化型ライブ配信サービス

ミラティブはスマホに特化したライブ配信サービス。その中でも重点を置いているのが、ゲーム実況だ。

「友達ん家でドラクエやってる感じ」をコンセプトに、誰でも簡単にスマホゲームのプレイ動画をライブ配信できる。

荒野行動、フォートナイトといった人気スマホゲームと連携をしており、ゲーム画面からミラティブを起動し、ゲーム実況をすることも可能。ライブ配信のため、実況者は視聴者とコミュニケーションを取りながら、配信することができる。ゲームをせずにただコミュニケーションを楽しむ、雑談部屋も多く見受けられる。

また、視聴者は配信者に対して、100円から1万円相当のプレゼントを送ることができるギフティング機能もある。

ミラティブが”Next”メルカリと呼ばれる、3つの理由

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特徴的なのは、2018年8月にリリースをした機能「エモモ」だ。

これは、ミラティブ上で作成できる自分のアバターだ。ゲーム実況や雑談をライブ配信する際に、自分の作成したエモモが画面上にいることで、あたかもエモモがゲームをプレイし、話をしているかのように見せられる。

最近では、バーチャルユーチューバー(以下、Vtuber)と呼ばれる、アバターで配信する動画が注目を集めているが、エモモはミラティブ上で誰でも簡単に作れるVtuberとしての機能を果たしている。ミラティブでは、リアルな世界とは別の自分になりながら、コミュニケーションを取ることができるのだ。

広告と手数料、2つの収益源

ミラティブが”Next”メルカリと呼ばれる、3つの理由

現時点におけるミラティブのビジネスモデルは、広告と手数料の2本柱。ゲーム会社とタイアップした際の広告による収益と、ミラティブ上で視聴者が配信者にプレゼントを送る際に発生する収益だ。後者では、視聴者はプレゼントを買わねばならず、その際にミラティブが手数料を取得していると考えられる。

SHOWROOMや17 Mediaなどのライブ配信サービスも同様のモデルで運営されており、すでに数十億円もの売上があるといわれている。ミラティブもビジネスとして、大きな可能性を秘めているだろう。

将来的にはエモモのアイテム購入もキャッシュポイントとして考えられる。過去にはDeNAやサイバーエージェントのアバターやピグが大きな利益を生んでいた。現在では、人気スマホゲームのフォートナイトにおいて、ゲームの強さに影響がない服装などのアイテムが購入され、莫大な利益を生み出していることを考慮すると、大きな収益源となる可能性が十分にあるのではないだろうか。

ミラティブが”Next”メルカリと呼ばれる、3つの理由

すでに複数のメディアではミラティブがNextメルカリと呼ばれているが、STARTUP DB編集部ではその理由が次の3つにあると考えている。

①経験豊富な経営陣の存在
②拡大する巨大市場での先行サービス
③エモモという名の日本独自文化

それでは各項目について、詳しく述べていく。

経験豊富なミラティブチーム

ミラティブが”Next”メルカリと呼ばれる、3つの理由

Nextメルカリとして呼ばれる理由のひとつが、経験豊富な経営陣の存在だ。スタートアップは少人数から急拡大をするため、事業、組織に対して経営陣が与える影響は大きい。同社のCEOである赤川氏は、DeNA時代に「Yahoo!モバゲー」や韓国支社DeNA Seoulの立ち上げを経験しており、最年少執行役員として海外事業の統括やゲーム開発に従事していた人物だ。

さらに、CFOには情報キュレーションアプリを展開するGunosyにてCFOを務め、約80億円もの資金調達、マザーズ、東証一部への上場を経験した伊藤氏が就任。CSOには元セガゲームス取締役岩城氏がジョインし、CCOもAppbankの子会社社長であった小川氏が務める。

そのほかにも、元DeNA新卒MVP、元フンザ(チケットキャンプ)執行役員、元Donuts事業部長、元ゲームポット(札幌アンビシャス上場)創業社長など、小さいチームながら数々の優秀な社員がジョインしている。IT業界のオールスターチームと呼ばれた、メルカリにも引けをとらないだろう。

巨大市場におけるマーケットリーダー

有望スタートアップを語る上で欠かせないのが市場の選択である。ミラティブのサービスはスマホライブ配信であるものの、ゲーム実況コンテンツがその多くを占めているため、ゲーム市場に分類される。そして、ゲーム・eスポーツ市場を専門とする調査会社Newzooによると、2018年の世界のゲーム市場は約15兆円と、前年比13.3%で増加している

その市場の大きさと成長率からゲーム実況のサービスも注目を集めており、2014年にはAmazonがゲーム実況プラットフォームを展開するTwitchを約1000億円で買収、2018年には同じくゲーム実況プラットフォームを展開するHuyaが上場し、ピーク時の時価総額は1兆円に近づいた。Youtubeでもゲーム実況動画が全体の15%を占めるとされており、動画界のマスコンテンツといえる。

ミラティブが”Next”メルカリと呼ばれる、3つの理由

調査会社Newzooのデータより、STARTUP DB編集部にて作成

そして市場で注目すべき点は、モバイルにおける市場の成長だ。最も成長しているのが、モバイル分野であり、2017年には全体の市場のうち42%だったものが、2018年には51%と、シェア率を高めている

拡大するゲーム市場の中でも最も成長をしているのが、モバイル分野といえる。

しかし、グローバルで見ても、モバイルに特化したゲーム実況サービスを展開する有名な企業やサービスはまだない。

あらゆる業界において、PCからモバイルへのシフトは起きている。同じくモバイルシフトしつつあるゲーム市場において、モバイル特化型ライブ配信サービスを展開しているのが、ミラティブなのだ。

Vtuberという日本独自の新しいキャラクター文化

ミラティブが”Next”メルカリと呼ばれる、3つの理由

Vtuberの領域は、日本発でグローバルで勝てる可能性が高いともいわれている。それは日本のキャラクター文化が独自性を持ち、世界で評価を受けてきたからだ。古くは浮世絵に始まり、漫画、アニメ、ゲーム、絵文字など、多くの日本発キャラクターが世界で人気を博してきた。キャラクター文化は、世界に誇る日本の得意領域といえるだろう。

GREEもVtuberに特化した子会社を設立し、100億円の投資を発表するなど、市場も活性化の兆しがある。世界で浸透しつつある、「自分ではない誰かになる」というニーズに対して、日本独自の文化で攻めるミラティブはグローバルで戦える可能性は大きいとSTARTUP DB編集部は考えている。

Nextメルカリ、ミラティブ

ミラティブの配信者数はすでに100万人を超えており、視聴者の20%もの人がライブ配信を経験している。動画の配信サービスを運営する中で、肝となるのが、この配信者の数だ。

サービス運営側として、視聴者を集めるならば広告によるプロモーションが効果を発揮するが、配信者は視聴者に比べ、配信するというハードルが存在するため集めることが難しい。そんな中、ミラティブにおいて全体のユーザーの20%が配信を経験しているという事実は、サービスが受け入れられつつある証拠なのであろう。

さらに資金調達を期に、テレビCMの放映も開始し、成長にドライブをかけていくと考えられる。メルカリが上場した今、日本に存在しているユニコーン企業(未上場で時価総額が1000億円を越える企業)はPreferred Networksの1社しかない。メルカリも引き続き応援するとともに、良いチームで良い市場に、良いプロダクトで攻めるミラティブにも引き続き注目が必要そうだ。