実家の家や土地の相続で注意しておきたいことを3回にわたって紹介する。今回は、実家が原野商法で購入した土地を所有している場合についてだ。

昭和40~50年代を中心に行われていた「原野商法」。このほとんど価値のない土地を高額で売りつける詐欺まがいのセールスに乗せられて土地を買った親が亡くなり、相続人の子どもが困惑するケースが多くなってきている。相続の際に、山林や原野が相続財産として出てきた場合、どうすればいいのだろう。札幌土地家屋調査士会副会長の小川和紀さんに話を聞いた。

親が「原野」を所有していることを、相続時に初めて知ることも

山奥の原野のような換価価値の低い土地を「リゾート開発が入るので、将来値上がりする」「将来、新幹線が通れば高く買い取ってもらえる」などの宣伝文句で、高い値段で販売していたのが原野商法。「地価が上がったら買い手がつく」という言葉を信じて投資目的で購入したものの、価値のほとんどない土地をただ所有しているだけの状態になっている人が多い。

「原野商法で取り引きされていたような土地は、固定資産価値が低いため、固定資産税が課税されていないことがほとんどです。そのため、親がそのような土地を所有していることを知らず、相続が発生したときに権利書が出てきて初めて知る、ということがあります」(小川さん)

税負担がなければ放置。相続放棄すると、他の遺産の相続もできなくなる

原野商法で購入した土地のほとんどは、道路も通っていない原野や山林。家が建てられるわけでもなく、所有しているのは原野や山林のごく一部なので売却も難しい。相続が発生したときに、わずらわしい、手放したい、と思う相続人もいるだろう。

「相続したくなければ相続放棄の手続きをする方法があります。

しかし、相続放棄は、その土地の権利だけを放棄して他の相続財産はもらう、ということはできず、自分の相続分すべてを放棄することになります。また、後から相続したい財産が出てきても、放棄の意思表示をした以上、放棄を撤回することができません。原野商法で購入した土地には固定資産税は課税されないか、されたとしても少額ですから、そのまま所有していても問題はないのではないでしょうか」(小川さん)

長い年月の中、相続が繰り返されると、土地の権利を持つ人がどんどん増えていくことになる。所有権をシンプルにしたいのであれば、土地の相続人は一人にするのがいいだろう。その際、不公平感を生まないために相続人全員が、その土地が高額で売却できるようなものではないことをきちんと自覚しておくことが大切だ。

「行政のほうからきた。測量するので費用を」などの詐欺に注意!

詐欺まがいの商法で購入した原野や山林をもてあましている所有者が、新たな詐欺に遭うことがある。悪徳業者に「購入を検討している人がいる。売却するためには測量の必要がある」「役所のほうから来た。この土地一帯に開発が入るので測量が必要だ」などと声をかけられ、売れるのであればとお金を払ってしまうケースだ。実際には購入検討者や開発の話などはなく、測量もされずにお金だけだまし取られることがほとんどだ。

実家が原野商法で購入した山林や原野を所有している場合、うまい話には乗らないよう、新たな詐欺が出ている話などを親子で話題にしておくと、リスク回避になるだろう。

●取材協力
札幌土地家屋調査士会 元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/07/114613_main.jpg 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル
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