気象庁の資料によると、日本の活火山の数は、2011年の時点で110を数えるという。そのなかで、中長期的に噴火の可能性を抱えている火山は47。
【画像1】噴煙を上げる桜島(写真提供:鹿児島市)
桜島は今年に入りすでに300回以上もの噴火を数え、比較的大きい噴火の際は、近隣の市町村へ火山灰を降らしている。
噴火活動を続ける火山のそばでの暮らしとはどんなものだろう? そして灰と上手につきあっていくためにどのような工夫をしているのだろう。桜島周辺の方に話を聞いてみた。
まずは、日常的に灰が降ってくる生活とはどのようなものなのだろうか?
「ニュース番組の天気予報では、翌日の桜島上空の風向きが報じられます。これによって、桜島が噴火した際に、自分が住む地域へ灰が降るか降らないかが分かるんです。風向きが自分の住む地域へ向いていた場合は、洗濯を避けたりしますね」(鹿児島市在住:34歳 会社員)
「灰が降っているなかで自転車に乗ると、灰が目に入ってとにかく痛いです。あと、雨が降ってるときに桜島が噴火すると、灰と雨が一緒になり泥のように降ってきます。灰雨って呼んでいます。でも長年住んでますからもう慣れっこですけどね」(垂水市在住:42歳 会社員)
「夏場、網戸を開けられないのが厄介です。家庭にもよるんでしょうけど、ベランダで植物を育てていると灰まみれになっちゃうので、私は部屋の中で植物を育てていますね」(鹿児島市在住:38歳 主婦)
住民の生の声を聞く限り、降灰による影響は生活にも、家にとってもなかなか大きいようだ。
鹿児島県では灰による被害を少しでも和らげようと克灰住宅なるものを普及しようとしている。一体、どのような住宅なのだろう。鹿児島県住宅政策室の佐伯正彦さんにお話を聞いてみた。まずは克灰住宅の特徴について。
「克灰住宅とは、降灰について家屋内への侵入を防ぐ、雨で流れやすくする、除去作業を容易にするの大きく3つの工夫を凝らすことを指しています」
例えば家屋内への侵入を防ぐために、窓には気密サッシや2重サッシを使用する。また灰の除去作業を容易にするために灰シューターと呼ばれるものを設置し、屋根から落ちる灰が自動的に溜まる仕組みにしているという。これらの工夫はいつごろから始めたのだろうか?
「昭和63年度に住宅の克灰対策の考え方を図説したパンフレット『灰にめげない住まいづくり』を作成し、平成2年3月に『克灰住宅設計マニュアル』を配布いたしました。平成5年以降、降灰量が減少し、特に平成14年から平成19年までの間は、あまり降灰が気にならない期間がありましたが、平成21年以降、降灰量が増えており、また霧島の火山活動による降灰も見られることから、最近克灰への注目が高まりつつあるようです」
【画像2】灰シューターの仕組み(出典:鹿児島県「克灰住宅設計マニュアル」)
克灰住宅は補助金を受けられる?ちなみに克灰住宅を実際に建てる場合、行政から補助金などは出るのだろうか。今度は克灰住宅を実際に手掛ける株式会社深野木組の深野木信さんに話を伺った。
「私たちが手掛ける克灰住宅は、国土交通省の『地域型住宅ブランド化推進事業』に採択されたものです。その為、実際に家を建てる際は、国から120万円の補助金を受けることができます」
地域型住宅ブランド化推進事業とは、地域の気候・風土にあった地域型住宅を支援する取り組みで、設計会社や施工会社がグループとなって、国土交通省に建築内容をプレゼンテーションする。その内容が認められれば、建築費用の一部を国に補助してもらえるというわけだ。
「鹿児島県がリードして克灰住宅の普及を進めていたときは、桜島の活動が沈静化していたためあまり広がりませんでした。しかし近年は噴火の回数が増えたため、お客様との設計打ち合わせの際は、必ず降灰対策の話題になります。お客様のご要望はさまざまなので、それに合わせてサンルームを設けたり、気密サッシを使用したりと臨機応変に対応しています」
克灰住宅は知識と施工技術さえあれば、どの施工会社でも手掛けることができるよう。ただ今回お話を伺った深野木組のように、補助金を受けられる克灰住宅を建築できる会社は限られているようだ。
一時的なものでなく、そこで暮らす限りはずっと付き合っていかなければいけない降灰。鹿児島に住む人は慣れっこと簡単に言うが、家づくりの工夫で負担が軽減されるにこしたことはない。
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