近年の都会では「草っぱらが広がる公園」というのをすっかり見なくなった。ひと昔前は、雑草の生える空き地で走り回ったり、泥遊びをしたり、水辺でメダカやカエルを獲ったり…というような風景が当たり前だったが、最近の公園には遊具が備え付けられていて、広場は芝生か砂で敷き詰められ、綺麗に整備されている。

そんな昔懐かしい草っぱらの公園が、実は東京23区内にもある。例えば、世田谷区の「ねこじゃらし公園」や、大田区の「くさっぱら公園」だ。いずれも、自治体と住民が一緒になって公園をつくり、その後の管理は住民が自主的に行っているのが特徴的だ。

今回はこのねこじゃらし公園の運営管理をしている住民組織・グループねこじゃらしの方に、詳しくお話を伺ったのでご紹介しよう。

まず伺ったのは、この公園のきっかけについて。

「ねこじゃらし公園ができたのは、約20年前のことです。世田谷区所有の土地に公園をつくることになり、近隣住民が集まって、どのような公園にするか意見交換をしたことが、公園づくりに関わるきっかけでした。その後、数回のワークショップを通じて、アイデアを出し合ったり、実際に模型をつくったりしました。近隣に住む中学生に参加してもらったこともあります。当初は、温水プールがいい、スケボーランプをつくってほしい、という意見もあったんですよ。ところが、話し合っていくうち、『昔は何もない草っぱらでよく遊んだ。今の子どもたちにもそれを経験してほしい』という声が多くなり、草っぱらの公園が実現しました。
また、完成後の管理についても“近隣住民が見守っていくべき”ということになり、グループねこじゃらしが誕生したんです」

ねこじゃらし公園は、とてもシンプルな公園だ。3000平方メートルあまりの土地には草はらが広がり、脇には水路があって水遊びができる。遊具はひとつもなく、手づくりのベンチやパーゴラが点在するのみ。

子どもたちは水路で水遊びをしたり、虫取りをしたり、ボール遊びをしたり、ただ走り回ったり、と思い思いの遊び方を楽しんでいる。大人も、散歩の途中で木陰のベンチに座って休憩したり、おしゃべりに花を咲かせたり、と公園を憩いの場として活用しているようだった。

グループねこじゃらしのメンバーは、現在25名ほど。年齢層も30代~80代と幅広い。

「公園の草取りや花の手入れなどの管理は、すべて、グループねこじゃらしが行っています。以前は、木の剪定も自分たちでやっていました。毎週1回、メンバーが交代で作業をするほか、月1回ワークデイという日を設けて、大がかりな草刈りや花壇の整備、肥料まきなどをやっています。どなたでも参加できますので、興味のある方はぜひいらしてください」

特に夏場の作業は大変で、刈っても刈っても草はらの雑草が伸びてしまうという。一見自然の風景のように見えても、裏では多くの人の手が掛かっているのだ。

さらに、これらの作業すべてを、ほぼボランティアでやっているというから驚き。とくに見返りがなくても、公園に深い愛着を持っているからこそ、自分の庭のように丁寧に管理することができるのかもしれない。「春先、自分の好きな花や植物を選んで植えることができるので、それが楽しみです」とメンバーの方は語ってくれた。

また、ねこじゃらし公園では毎年、公園の”バースデイパーティー”が開かれている。

「毎年、公園が完成した4月20日前後の休日にイベントを開いています。子ども向けのお祭りで、紙芝居やおもちゃづくりなどのコーナーを用意します。子どもが100人以上集まることもあるので、公園内は大にぎわいになりますよ。来年、2014年は公園ができてちょうど20年なので、大がかりなイベントを考えています」

そのほかには目立ったイベントは企画していないとのことだったが、自然が豊かなだけに、四季折々、さまざまな出来事があるようだ。例えば、「春先には、カエルが水辺にたくさん卵を産みつけます。夜にはカエルが大合唱することもありますよ」とのこと。カエルが怖い、という子どもがいる傍ら、卵やオタマジャクシをたくさんとって嬉々として帰る子もいるようで、この公園で遊びながら自然と生き物に触れあえるというのは、とても魅力的だ。

最近では、プレイパークなど、子どもたちが自主的に遊びを創出したり、土や草、水に触れ合う遊びが注目されている。

いつもの公園遊びに飽きたら、趣向を変えて、こういった草っぱらの公園で自由な遊びを楽しむのもいいかもしれない。

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