●人気寿司店『SUSHI BANYA KAI 品川店』のお得なランチを体験。そこで働く女性寿司職人に話を聞いてきた
日本が世界に誇る料理、寿司。
しかし東京・品川に、高級かつ上質でありながらリーズナブルに寿司をいただけるという店を見つけました。それが、『SUSHI BANYA KAI』。低価格で上質な寿司をいただける理由は何なのか? その秘密を探るべく、現地へ。実際に寿司をいただきながらその秘密を探ってきました。

同店が店を構える場所は、東京・品川駅。品川駅港南口から徒歩5分ほどのグランドセントラルタワー1階にあります。事前に調べた情報によると、連日満席で特にランチが人気だそうです。どうやらその人気の秘密は、このお店の仕組みである「職人育成店」というところにポイントがあるようです。今回は、その味わいや低価格のカラクリを身をもって体験してきました。
→【動画】(密着)品川で輝く20代女性・寿司職人!パン屋を辞めてまで選んだ寿司職人の世界とは?(YouTube『食楽webスゴメシチャンネル』)
通常の半額近い価格で味わえる「板前スクールランチ」

実はこの『SUSHI BANYA KAI』では「板前オープンスクール」という取り組みを実施しています。「寿司職人になりたい」という人の中から志の高い人を入店させ、ベテラン職人と一緒にカウンターに立たせて実践で「寿司のなんたるか」を覚えていくというシステムです。
献立は8000円程の料理内容ですが、品川店のランチでは板前スクール生が握る「板前スクールランチ」として、4840円(税込)でいただけます。ランチが通常価格よりも安い理由は、まだ修業中の寿司職人が握るからなのです。
全16品にも及ぶ豪華なコースがこの価格でいただけるお得感、そして(修業中ではあるものの)本物の味を提供する若手職人のフレッシュな接客の楽しさもあり、この「板前スクールランチ」は特に人気なのだそうです。

いざ「板前スクールランチ」を実食。お通しのもろこし豆腐にはじまり、主役の7貫の握りとなる本鮪の中とろ、大とろ、天然平目昆布〆、金目鯛、鰹たたき、縞鯵、帆立が1貫ずつ提供されます。
ネタごとに身の硬さや質感が違うはずなのに、すべて美しい湾曲を描いており、口の中で綺麗にほぐれてくれるシャリの握り具合も一流の味わいです。

もちろん、ネタも絶品揃い。大とろや金目鯛は、煮切りが脂の旨みをグッと引き出し、クセがある鰹などは、マスタードを合わせることで個性的な味わいを表現しています。口にするたびに「旨い!」と声が出てしまいます。いずれのネタにも職人の技を感じるものばかりで、繊細で優しい印象を受けました。
この他、別途提供された鰻茶碗蒸し、お浸し、帆立、後半の寿司の生雲呑と煮穴子、丼のKAI丼やお椀、そしてカステラ玉子、西瓜まで、大満足の味を楽しむことができました。
24歳の女性寿司職人・内藤さんの略歴とは?

「板前スクールランチ」を堪能し、その実力を舌で体験した筆者。改めてカウンターに目を向けると、今回の握りを担当した職人に驚かされました。なぜなら、とても若い女性だったからです。高級寿司店というと、どうしても風格のある男性職人というイメージがあります。興味を惹かれた筆者は、その寿司職人にお話を聞いてみることにしました。
今回カウンターに立っていたのは、24歳の寿司職人・内藤恵理華さん。真面目な視線と素晴らしい手捌きから、一瞬声をかけることを躊躇しましたが、話しかけると、20代らしい明るい笑顔で答えてくれました。
「もともと、大学時代にアルバイトをしていたフレンチレストランに就職したのですが、コロナ禍の影響で転職を余儀なくされました。その店で『パンの面白さ』にも興味を持ったので、パン屋に転職。そのパン作りも面白かったのですが、うまく焼き上げられるようになると、さらに欲が出てきまして(笑)。パンも大好きだけど、一番好きなお寿司を自分で握れるようになりたい! と思い、『SUSHI BANYA KAI』に入らせてもらいました」(内藤さん)
“女性寿司職人”というだけでも珍しいのに、ましてや24歳という若さ。臆するところはなかったのでしょうか?
「これやってみたい! と思ったらすぐ飛び込む性格なので、不安はありませんでした。

従来の寿司職人修業というと、「シャリ炊き3年、あわせ5年、握り一生」とも言われ、そう簡単に寿司を握らせてもらえないイメージがありますが、『SUSHI BANYA KAI』が実施する「板前オープンスクール」では、入ってすぐに魚の身おろしを実践させてもらえるといいます。
実際、内藤さんは『SUSHI BANYA KAI』に入ってまだ1年未満。それでもカウンターに立ち立派な寿司をにぎり、提供しているわけですから、ある意味、ものすごい“時短”が叶っているということになります。
「当初は、特に“所作”に対してすごく注意されました。包丁を置く時も雑に置くのではなく、綺麗に拭いて丁寧に置くとか、箸も綺麗に戻すとか、細かい所作への気配りは他の飲食とは違うなと思いました。
また、技術的には“シャリを握る”というのはかなり難しく、最初の頃は自分で練習しても正解がわからず、シャリの高さも大きさも統一できませんでした。なので、まず“手ばかりで10g握れること”を目標にがんばりました。それができるようになったら、握ったシャリの中に空気を入れるという訓練を続けました。
男性の先輩が教えてくださるのですが、手の大きさも指の長さも違うため、真似してみても同じようにはなりません。そこは自分自身の手の大きさを鑑みて工夫しながら覚えていった、という感じですね」(内藤さん)
将来はフランスで「寿司+野菜」の店をやりたい!

内藤さんに「どのネタが一番好きか?」と聞いてみると、意外な答えがかえってきました。
「一つだけ食べたいというわけではなく、いろんな種類のネタが好きです。一度にさまざまな魚が味わえるのもお寿司の醍醐味だと思っています。
24歳という若い女性から、これだけ立派な回答を受け、かえってたじろぐ筆者でしたが、将来の夢も聞いてみました。
「自分で納得できるところまでやってみて、最終的にはフランスに行ってお寿司屋さんを出してみたいです。日本は海の恵みが豊富にありますけど、フランスは農業が盛んです。日本とフランスの自然の恵みの共通点を活かして、魚だけでなく野菜も取り入れたお寿司屋さんができれば良いなと思っています。プライベートではワインも好きですので(笑)」(内藤さん)
IT、AIにはできない「職人技」で世界を目指す

「板前スクールランチ」と聞くと、どことなく修業中の美容師のモニターカットのようなイメージがありましたが、『SUSHI BANYA KAI』は、あくまでも「経験年数が浅い」というだけで、ベテラン職人と遜色ない味わいを楽しむことができました。
最後にこの画期的な取り組みについて、同ブランドを運営する大東企業の廣瀬進さんにも話を聞いてみました。
「うちの『板前オープンスクール』は、未経験の方でも入社していただき、板前修業をして成長してもらうという取り組みです。個人差があるため、ステップアップの流れには個人差がありますが、未経験でも初任給約30万円で、“寿司の技”を習得することができます。
『板前オープンスクール』を目指して入社した人は、パン職人だった内藤以外にも、イタリアンやフレンチの経験者や、飲食とは関係ない水道工をしていた人、IT関係の会社に勤めていた人もいます。こういった人たちは皆さん、“職人のスキルを得たい”と言います。あらゆる職業がIT、AIに置き変わっていく中で、“職人のスキル”はAIでは実現できないわけで、そこに魅力を感じてくれているようです。
当社では、和食ブランドとしては『SUSHI BANYA KAI』を含む7ブランドを運営しています。
まとめ

“寿司屋”と言うと、あらゆる飲食業の中でも「敷居が高い」筆頭だと思っていましたが、今回お話しした24歳の寿司職人・内藤さんの経緯とその味、そして廣瀬さんの話から、新しいフェーズに突入しているようにも感じました。
ぜひ一度『SUSHI BANYA KAI』で「板前スクールランチ」を食べてみてはいかがでしょうか。修業中とは思えぬ繊細な味わいに、寿司の新しい可能性を感じることができると思います。
(取材・文◎松田義人)
●SHOP INFO
店名:SUSHI BANYA KAI 品川店
住:東京都港区港南2-16-3 品川グランドセントラルタワー 1F
TEL:03-6717-6251
営:11:30~14:30(L.O.13:00)、17:00~22:30(L.O.21:00)
休:不定休