こんにちは。羊肉を普及させることを目的とする消費者団体・羊齧協会の菊池です。
外食できないとなると、家での料理にちょっとずつ凝り始めるようになるのは、皆さん同じですよね。私も「おうち羊(家で羊を料理して食べること)」を極めるべく、いろんな料理に挑戦していましたが、今では一周回って「シンプルに焼いた羊にはどんなスパイスが合うか?」を考えて試行錯誤しています。今回は、その研究成果を皆さんにご紹介しましょう。

塩(すべての基本)、ニンニク醤油(ラムチョップに最高に合う)、ローズマリー(王道にしてベスト)など、ベーシックな調味料はもちろん多数あるのですが、今回は「ミックススパイス」とこだわりのスパイスを3品、ご紹介したいと思います。
スパイスの味わいがよくわかるよう、シンプルにフライパンで「焼くときにかける」か「焼いた後につける」という方法で羊肉に合わせました。お肉は、花形部位である厚切りのオーストラリア産肩ロース。
ちなみに今回、お肉を買ったのは『なみかた羊肉店』。羊肉は厚さも大切。100g単位で選べる「生ラムショルダースライス」をちょっと厚めの7mm前後でお願いし、スパイスに負けないようにしました。
まさに羊専用スパイス! 「羊名人(ようメーじん)」

羊齧協会推薦のこのスパイス、唐辛子をベースに、クミンや花椒、生姜などの香りが効いた、ド直球の「羊肉専用」ミックススパイスです。けっこう有名になってきたので今回は外そうかなとも一瞬考えましたが、やはり実力がスゴすぎるので、改めてその魅力をお伝えしたいと思います。
というのも、筆者はいつも羊肉を焼く時に、これを目分量で使っていたのですが、今回、脂が旨そうな肩ロース厚切り肉に、袋の裏に書いてある推奨量をきちんと計って振りかけて焼いてみたのです。すると、「あ、これはスゴいわ!」と改めて大興奮。もともと脂によく馴染むスパイスなのですが、羊の脂との相性が抜群すぎるのです。

よく言われる羊肉の独特の香りは、脂にあります。その羊風味の総本山の脂と、羊名人が混ざり合うと、互いの長所を生かし合い、羊肉を数倍旨くしてくれるんです。羊以外に、鶏にも豚にも野菜にも合うので、最近は料理の隠し味的に使ったりもしていたんですが、シンプルに羊に使うと、その旨さに改めて驚愕します。
ここまで用途が限定されるマニアックなスパイスにもかかわらず、ジワリとスーパーでの取り扱いも増えており、筆者の近所(さいたま市)のスーパーだと、8割の店舗で手に入るようになりました。
●DATA
羊名人(ようメーじん)
https://kojuken.co.jp/item/10325/
やはり醤油は日本人の心の味! 「マジカルスパイス」

次にご紹介したいのは「マジカルスパイス」。福岡の醤油屋さんが作ったスパイスで、豪州産天日塩、コリアンダー、オレガノ、バジルなど、10数種類のスパイスを絶妙なバランスで調合した調味料です。

羊肉は言うに及ばず、どんな料理や食材にも合うんです。親しみやすいこの味は何なのだ? と不思議に思って瓶の裏を見ると、醤油パウダーとフライドガーリックとの表記。そう、日本人が好きな「ニンニク醤油」がベースだったんですね。
ちなみに大昔、あるプロのシェフと一緒に、台所にあるもので羊に何が一番合うのか実験したことがあります。いろいろ試した結果、結局、ニンニク醤油が一番旨い! となりました。つまり、羊×ニンニク醤油は、プロも認める組み合わせなのです。

こちらも、厚切りの肩ロースをシンプルに焼いて、味付けに使ってみると、その美味しさがよくわかります。醤油が入ってるならちょっと和風になるのかな? と想像されるかもしれませんが、醤油の親しみやすさはそのままに、けっこうガツンとスパイシーな仕上がりに。
●DATA
マジカルスパイス
https://shop.magicalspice.jp/
鮮烈なシビれと香りが羊に合う! 「金の太陽花椒」

最後にご紹介するのは、ミックススパイスではなく、中国四川省産の青花椒です。青い花椒は赤い花椒と比べると、シビれ感が鮮烈でより香り高いのが特徴。特に、この金の太陽花椒は四川省南部の涼山イ族自治州金陽県で栽培された逸品。鮮烈な香りがやみつきになります。

ミックススパイスとは違い、花椒はシンプルに羊の旨さを引き出すスパイスと言えます。塩分は含まれませんので下味をつけて焼いた後に振りかけて食べましたが、羊の香りと花椒の香りが混ざり合い、まさに「最高」のひと言。

汎用性も高く、例えばジンギスカンのタレに加えたり、市販のミックススパイスにちょい足ししたりと、シンプルが故に楽しみ方も広いのが魅力です。
●DATA
金の太陽花椒
https://item.rakuten.co.jp/spanion/green-sichuan-pepper/
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ご紹介した以外にも、羊肉に合うミックススパイスは色々あります。最近はますます羊肉が手に入りやすくなっているので、ご家庭での“おうち羊”を、ぜひこだわりのスパイスとともに楽しんでみてください。
●著者プロフィール
菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で羊料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼して羊好きの消費者団体「羊齧協会」を結成。本業はイベントの開催・運営、アドバイザー業務など。四川フェスの運営団体・麻辣連盟の幹事長も兼務。監修書籍に「東京ラムストーリー」(実業之日本社)、「家庭で作るおいしい羊肉料理」(講談社)など