雑誌などで大阪のグルメ特集があると、必ずのように登場するお店がなんばにある『自由軒』。明治43(1910)年創業、110年以上の歴史のある老舗洋食屋で、ご飯に混ぜた状態で提供される「名物カレー」が有名です。

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 かに道楽やグリコの派手な看板が並ぶ道頓堀から南へ5分ほど歩くと、自由軒に到着。デカデカと書かれた名物カレーの文字で存在感はバッチリです。

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 ちなみに自由軒を語る上で欠かせないのが、小説家・織田作之助の著作「夫婦善哉(めおとぜんざい)」。大正から昭和の大阪を舞台に、主人公である芸者の蝶子と妻子持ちの男である柳吉が駆け落ちをしたのち、二人で次々と商売をしては失敗しつつ一緒に生きていくという小説です。

 主人公の夫である柳吉はろくに生活力もないのに、味には人一倍こだわりがあるというかなりのダメ人間。そんな柳吉が旨い! と蝶子に勧めて一緒に食べるのが、この自由軒の名物カレーなのです。

織田作之助自身も常連で、毎日のように名物カレーを食べ、店内で小説の構想を練っていたそうです。

 前置きが長くなりましたが、この「名物カレー」を食べてみたのでご紹介しましょう。

玉子乗せカレーの発祥は自由軒の「名物カレー」って知ってた?

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 この「名物カレー」は、カレーとご飯が混ざっている上に、玉子が乗っています。カレーに玉子という今では定番のトッピングを、初めて組み合わせたのが自由軒だと言われています。

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 玉子をどうやって食べるかは各人の自由ですが、まずは混ぜないでプレーンな状態で一口。「明治から続くカレーだから、そんなに辛くないかな?」と思っていましたが、意外なほどスパイシー。100年前の人にはかなりの衝撃の味だったと想像できます。

 玉子をつぶしてカレーに混ぜ合わせると、一気にマイルドな印象に変化。そして、自由軒のカレーをさらに一変化させる方法があります。それが、テーブルの上にあるウスターソースをかけること。

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 ソースの味も少しスパイシーで、玉子でまろやかになったカレーがまた違ったスパイシー&まろやか風味に変化しました。ちなみに関西の人はカレーにソースを掛ける人が多いのですが、これも自由軒が発祥だそうです。

 カレーに玉子とソースを加えてじっくり混ぜ、完全に均一な味にして食べるのも美味しいですが、混ぜムラをあえて作って食べると、一口ごとに印象が変わるのでオススメですよ。

名物カレーだけじゃない! 創業当時から人気の「ビーフカツ」も食べてみた

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 自由軒といえば名物カレーが有名ですが、ほかにも洋食メニューが豊富に揃っています。こちらはインパクトのある「ビーフカツ」。

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 ガッシリとした赤身の牛肉をサクッと揚げた創業当時からの人気メニューです。ボリューミーな見た目ですが、少し酸味のあるサッパリしたデミグラスとの相性は抜群で、見た目ほどヘビーではなく、美味しくいただけます。

「夫婦善哉」の世界観にふれて味わいたい

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 少し懐かしくて今でも美味しい自由軒の料理の数々ですが、小説「夫婦善哉」の頃の大阪庶民にとっては最先端のハイカラなメニューであり、カルチャーショックでさえあったことは想像に難くないです。

 お店に行く前に「夫婦善哉」を一度読んでみて、その世界観にどっぷり浸って食べてみると、捉え方が少し変わってより一層楽しめますよ。

玉子のせカレーの発祥! 昭和の文豪も愛した大阪『自由軒』の「名物カレー」を食べてきた!

 お店の店員さんはチャキチャキと威勢があって親切で愛想もよし。

蝶子をはじめ、「夫婦善哉」に登場する人物を思わせる雰囲気も味わってみてください。

(撮影・文◎けいたろう)

●DATA

自由軒 難波本店

住:大阪府大阪市中央区難波3-1-34
TEL:06-6631-5564
営:11:30~21:00(L.O.)
休:月曜
http://www.jiyuken.co.jp/

●著者プロフィール

けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。