先週「ドライアイス不足」について取り上げました。環境に配慮して「脱炭素」を進めた結果、ドライアイスの原料である二酸化炭素が足りなくなった。
保冷剤の中身は「水」と「吸水性ポリマー」
そもそも保冷剤の中身って何なのか?静岡県の保冷剤メーカー「トライ・カンパニー」の石原 紀彦さんに聞きました。
トライ・カンパニー 石原 紀彦さん
水がですね98~99%ほどです。残りの1%が「ポリマー」でしたり「防腐剤」だったり「安定剤」が入るような形になります。
「吸水性ポリマー」というのは、紙おむつにも使われておるんですけれども、自重の数100~数1000倍の水を吸い込むので、本当に少量でゲル状になると。ゲル状ですと、要は水が流れていかないので、まだ凍ってる部分が溶けるのが遅くなりますので、そこで長持ちをすると。
燃やしてですね害が出るものとかではないんですけれども、各自治体さんによって結構区分が違いまして、「燃やすゴミ」のところもあれば、「不燃ゴミ」(のところもある)。
ただ、中身は一般的にはゲルタイプのものが多いので、下水には流せないものです、中身をですね。区分に従っていただければ、特に中身と外側を分ける必要性はないので、「そのまま捨ててください」というような回答にはなりますかね。
中身がゲル状でビニール袋に入った「ソフトタイプ」と呼ばれる保冷剤、捨て方は自治体によってバラバラです。多くの自治体では可燃ごみですが、愛知県清須市などでは不燃ごみ扱い。確認が必要です。
さて、その中身ですが9割が水。残り1割に秘密があるようです。鍵となるのが「吸水性ポリマー」という素材。このわずかなポリマーが、保冷剤の中の水をギュッと抱え込んでゲル状に。これが溶けにくさの理由ということでした。
さらに、中身の配合を変えれば狙った温度の保冷剤も作れるそうで、ケーキなどについてくる保冷剤は「0度」タイプですが、トライカンパニーでは「-11度、-16度、-21度、-35度」と温度別のラインナップを揃えています。
そしてやはり、ドライアイス不足を受けて保冷剤に切り替えている会社が増えているようで、ドライアイスはなんと「-79度」と圧倒的に冷たいのですが、保冷剤は安定して手に入る上、繰り返し使えます。これからの季節はクリスマスケーキやお歳暮、おせち料理で大忙しだそうです。
オレンジの皮が保冷剤に! 土に還るポリマー
ただ、この吸水性ポリマー、実は石油由来のものがほとんど。使い終わっても再利用する方法がなく、ゴミとして捨てるしかありませんでした。ところが最近、ある食べ物から作った環境に優しいポリマーが登場しています。開発した沖縄の会社・EFポリマー株式会社の中尾 享二さんに聞きました。
EF Polymer株式会社・Chief Marketing Officer 中尾 享二さん
EF Polymerの自然由来のポリマーを使った保冷剤「Cy-Cool(サイクール)」。対企業向けに販売されています「オレンジの皮」と「バナナの皮」を、こうしたものを原材料として作っている。
増粘剤として使われる「ペクチン」という成分がこの作物の中に入っていて、それを抽出をして、グッと吸水性を高めることで「超吸水性ポリマー」というものになります。従来の保冷剤と機能性は変わらずですね。自然由来のもので、いわゆる微生物の餌になるんですね。例えば保冷剤の中身を観葉植物とか、パックをハサミで切っていただいて、それをそのまま土に流し込んでいただくと、そのまま「保水剤」として使えるようになります。私は結構出張が多いので、ポリマーを入れておくと、数日間水を保った状態にしてくれて、元気さがかなり違うなっていうのはありますね。
保冷剤が溶けにくいのは、ゲル状の「とろとろ感」があるから。そのとろみを植物由来のもので作れないか、試行錯誤の末に見つけたのが、オレンジとバナナの皮だったそうです。
9割は水、1割のポリマーは自然のもの。微生物に分解されて、1年ほどで完全に土に還ります。しかも、その間は水を貯め込んでくれる。
「サイクール」と言う名前のこの保冷剤、大手雑貨店で採用が始まっているそうです。
干ばつを救え!インドから世界へ広がるポリマー
さらにこのポリマー、実は農家の救世主になっているました。
EF Polymer株式会社・Chief Marketing Officer 中尾 享二さん
例えば、レタスとかを育てる際に、植え付けの前のタイミングで、ポリマーを土に混ぜ込んでいただいて、作物を植え付けていただく。これが、通常ですと土の中で流れ出てしまうような「水」や「肥料」も、長期間保持してくれて、理論上はですね、水をだいたい最大40%ほど節約ができるようなものになっていて。それから肥料も約2割ほど削減をしながらでも安定的に収穫量を確保するというようなコンセプトになっています。
かなり環境が悪ければ悪いほど、良い効果が得れるようなものでして。日本の外ですと、インドの干ばつ地帯、本当に砂漠地帯みたいなところで、やっぱりビフォーアフターでびっくりするような結果っていうのが見られてますね。
じつは、この会社の社長はインド出身のナラヤンさん。水不足の地域で育ちましたが、農家の父親が作物を育てられず苦しむ姿を見て、高校生の時にオレンジやバナナの皮で実験を重ねました。
最初に作ったのは、農業用のポリマー。土に混ぜるだけで、水を4割、肥料を2割も節約できて、日本国内でもレタス、キャベツ、パイナップル…様々な農作物に使われているそうで、世界6カ国で採用されています。
この農業技術を応用したのが、先ほどの自然由来の保冷剤「サイクール」。さらに化粧品や日用品など、さまざまな分野に展開。
(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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