今日は日本各地で大繁殖して問題になっている「ナガエツルノゲイトウ」という特定外来生物の話題。南米原産の水草で、繁殖力が非常に強く「史上最悪の侵略的植物」と呼ばれています。

去年の5月に同コーナーで取り上げた際には、25の都府県に広がっていると紹介しましたが、すでに31都府県に広がっており、今月の1日には群馬県でも初めて発生が確認されています。

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水面を覆うナガエツルノゲイトウ

水辺に行く機会がない方は実感がないかもしれませんが、一度繁殖してしまうと、あっという間に水面を覆うほど広がってしまうため本当に困っているんです・・・。

洪水を引き起こすリスクも・・・

ナガエツルノゲイトウがどんな悪影響を及ぼしているのか、甲南大学理でナガエツルノゲイトウ対策の研究を行う、今井博之教授に伺いました。

甲南大学 理工学部・生物学科 植物細胞工学研究室・今井博之 教授

今言われているのが、生態系の破壊・悪影響です。それから農業被害、主にこれは水田ですけれども、それも非常に問題となっているわけですね。それからもう一つ最近言われているのが「治水」ですね。大雨が降って、そうすると水の管理が必要になってきますけれども、水門ですとか、そういったところにナガエツルノゲイトウが引っ掛かって、門の開け閉めが思ったように管理できないということで、河川から水があふれて、道路が冠水したりとか、家屋が浸水したりというようなことが指摘されていますね。根絶の仕組みを考えていきたいと思っています。

生態系に、お米に、水害・・・どれも怖いですよね。

ナガエツルノゲイトウは「種」で増えるのではなく、茎や葉っぱの断面から再生するクローン式。茎は折れやすく、たった2ミリのカケラからも再生してしまいます!しかも海水でも生息することができるという・・・最恐です。

史上最悪の侵略植物!刈り取った後も厄介!

白い花を咲かせ、茎が折れやすい

今のところナガエツルノゲイトウだけを駆除できる農薬は開発されておらず、刈り取って燃やすことしかできない状況。各県が費用をかけて対策してもどんどん増えてしまうので、刈り取る量も膨大な量になっています。

刈り取って終わりじゃない、その後の戦い

しかも刈り取った後の「処分」においても厄介な問題があるようなんです。 香川県で環境技術の開発を行うキョーワソリューションの寺島美保子さんのお話です。

株式会社キョーワソリューション 技術部長・寺島美保子さん

ナガエツルノゲイトウは従来の処理方法にも多くの問題がありました。特定の外来種なので、駆除した後の運搬にもパッカー車とか使わなきゃいけないので運搬費も増大しますし、また最終的に処分するにしても水分も多いですし、ゴミや土も多いので焼却炉の痛みを早めてしまうという問題もありまして、乾燥してから持ち込んでくださいというのが皆さん言われているようです。ところが乾燥させるために山積みにしている間にも腐敗臭が出てしまったり、そういう問題がありまして、仮取り量にも制限をかけないと困ってしまう。一気に刈り取らないで残してしまうと、またそこから再生もしてしまうので堂々巡りと言いますか、あらゆるところでつながって解決の難しい問題になっております。

なんという厄介な問題・・・まさに後始末においても大変な侵略植物とも言えます。

厄介者を肥料に!

そんな中、この厄介者を資源に変えようという取り組みが始まっていました。

ナガエツルノゲイトウを肥料に変える堆肥化技術「KS工法」というもの。堆肥化に向いていないと言われたナガエツルノゲイトウですが、どのように堆肥化を行うのか。再び寺島さんのお話です。

株式会社キョーワソリューション 技術部長・寺島美保子さん

直接、発酵促進剤、種菌を添加して撹拌して、ブルーシートをかけて熟成します。活動するために空気を必要とする菌を使って堆肥化する、従来一般的に行われていた堆肥化ですと、シートをかぶせておくと空気がなくなってしまうので、そこからまた腐敗が始まってしまったりという問題があるんですけれども、当社の技術は空気があってもなくても発酵を進めてくれる菌を使っているので、悪臭も発生させずに現場で堆肥化することができます。

また、大量の土と焼却炉の傷みという問題もありまして難しいんですけれども、これも土ごと破砕して堆肥にすれば、また畑にも戻せますので、困っているところほど広めていきたいと思っております。

従来、堆肥化するためには、建物や大掛かりな設備が必要でしたが、この方法であれば、屋外でも堆肥化が可能です。ナガエツルノゲイトウは、大量に刈り取った後の運搬作業がまず大変なんですが、これであれば発生場所の近くに積んで堆肥化できます。

刈り取ったものはそのまま野積みできないルールになっているため、シートをかぶせる必要があるのですが、そうすると空気が少なくなり菌が働けない・・・そこで空気が少なくても発酵を進めてくれる菌を開発したわけです。

作業も数回程度の撹拌作業で済むのでランニングコストも低く済みますし、さらには、作物や植物が病気に強くなるという、作物にとってもメリットが多い特徴もあります。

菌の仕込みから完成までおよそ3か月で、現在は一般家庭や農家の皆さんに自治体から無料配布していて大好評ということでした!

ナガエツルノゲイトウとの闘いは、簡単には決着しないでしょうから、「どう除くか」と同時に「どう活かし、広げないか」が大きな課題です。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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