中東情勢の悪化による「原油」の高騰で様々な物の値段があがっています。とくに身近なもので心配されているのが「プラスチック製品」の値上げ。

国内の製造メーカーはかなり深刻な状況のようですが、現状どうなっているのか?

ナフサ高騰が痛手

千葉県市原市でプラスチック製の食品容器などを製造している「マサキ工業」の代表、金井 俊助さんに伺いました。

「マサキ工業」代表 金井(かねい) 俊助さん

3月上旬あたりから原料メーカーから「中東情勢の影響により供給不足とか、値上がりの可能性がありますよ」という案内が来た。先週末ぐらいには国内のメーカーから「価格が1キロ100円上がります、90円上がります」という案内がきはじめた。

ポリプロピレン、ポリエチレンとかの米粒みたいなペレット。正直、入ってこなければ作れない。だから今結構原料を取り合いしてる感じです。だからいろんなメーカーさんに声かけて…。

あまりにも高いんで、早く終わってほしいですよね、戦争っていうかそういったものが。これが長引けば長引くだけでみんなが苦しくなっていくのかなって。

原油からプラスチックができるまでには、いくつかの工程があります。

まず原油を熱して「ナフサ」という液体を取り出す。それをさらに800度以上の高温で熱します。すると、ナフサの成分がバラバラに分断されて、プラスチックの素になる「ガス」が生まれるんです。

そのガスを加工して固めた粒が、金井さんが言っていた「ペレット」です。つまり大元の原油が入ってこなければ、ペレットも作れないし、プラスチック製品も作れない。

マサキ工業ではこのペレットをタイやマレーシアなど海外からも輸入していますが、現在1キロ250円ほどの原料が、一気に100円近く値上がりするという通知があったようです。こちらの会社では5月までの原料は、なんとか確保できる見通しですが、その先は「まだわからない」とのことでした。

卸値108円の石鹸、100円で売る

こうしたプラスチック製品のコスト高。とりわけ厳しい立場に置かれているのが「100円ショップ」です。実はこちらの業界、ここ数年の円安や物流費の高騰ですでに利益は限界まで削られていたんですが、板橋区「ぴっくあっぷ大山店」、店主の三坂 護さんが一枚の紙を見せてくれました。

「ぴっくあっぷ大山店」店主 三坂 護さん

この案内見せましょうか。これがこの石鹸ですよね、値上げの案内。固形石鹸です、石鹸2個で100円なんですよ相当安い人気商品。これが「2026年3月1日納品分より原価が上がりますよ」というメーカーの通知なんですよ。今までは100円以下で仕入れられていた、何とか目玉商品としてやってこられた。これが結局3月1日から原価が「108円」ですよ原価。

だから100円で売れないんですよ、8円持ち出すか・やめるか・値上げするかっていうそういう話。こういうものがこれだけの中に相当数あるんですよ。

例えばこれは「76円→85円」、9円上がってますよね。利益だった分を全部持っていくって話なんで、厳しいんですよ。

でも「100円ショップ」って言っちゃってるんで、100円でなんとか売れる商品を集めないと、お客さんの期待を裏切っちゃうじゃないですか。そういう話ですよ。

100円ショップ続けていけるか 原油高が直撃の画像はこちら >>
<今年3月~仕入れ値が税抜き108円になった石鹸(2個入り)。店頭では税抜き100円で販売しています(3月26日時点)>
100円ショップ続けていけるか 原油高が直撃
<地域で長年愛されている100円ショップ「ぴっくあっぷ大山店」>

三坂さんに「値上げリスト」を見せてもらったのですが、A4用紙に商品名がびっしり。ポリ袋、洗濯ネット、耳栓、突っ張り棒…多くの商品が、10円、20円の値上げ、という通知が並んでいました。

大手100円ショップであれば、自分のところで大量生産してコストを抑えることもできますが、個人経営の三坂さんは、取引先から一点一点仕入れています。先ほどの固形石鹸は仕入れ値が108円。これだと売れば売るほど赤字になってしまうので、今後、取り扱いをやめる可能性もあるということです。

円安や物流費の高騰で、もともと厳しい状況ではありましたが、先行きへの不安はさらに深まっているようです。

値上げした商品も

ただ地域に根ざしておよそ30年。他店が廃業する中でも、お客さんのために踏ん張って営業を続けてきました。そうした中で店頭には「100円ではない値札」も増えてきたようですが、お店を維持するための、やりくりを聞きました。

「ぴっくあっぷ大山店」店主 三坂 護さん

100円ショップなんで「100円で売れるかどうか」がボーダーラインなんですよ結局ね。「目玉だから、90円で仕入れて100円で(売っても)しょうがないか」っていうのもあるけど、100円を超えちゃうとアウトなので…。

例えばこれも値上げになっちゃったんです。トイレ用とか、カビ取りの掃除に使うやつですよね。でもお客さんは「やめないでくれ」って言う。このメーカーしか作ってないものもあるんでね。これは「128円」にせざるを得なくてね。100円では売れないけど、置いて納得してもらってるのも相当あるんですよ。

これもプラスチック、「200円」に売価自体を設定し直して、100円以外のものが増えちゃってるんですよね。

でも長年やってきたんで、例えばお子さん連れてきて「この中のおもちゃ、どれでもいいから、2ついいわよ」みたいな話がなくなってきちゃうんで、やっていきたいなとは思いますけどね…。

どうしても値上げせざるを得ないものも増えてきているそうですが、当たり前だったはずの日常が、多くの「踏ん張り」で支えられていること、一円単位の変化が物語っていました。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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