今、世界中で「青」と「赤」が足りないんです。何のことかというと「染料」のお話。

実はこれ、いろいろなところに影響が出始めているようです。
10月22日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まず何が起きているのか?生地染の加工会社、貴志川工業株式会社の高林裕司さんのお話です。

★中国で相次ぎ工場閉鎖。「青」が足りない事態へ貴志川工業株式会社 高林裕司さん「いま国内で使われている染料というのは、ほとんど中国で生産されている。その中国で、いま環境規制が非常に厳しくなって、中国の工場が操業停止に追い込まれている。
そういう状況の中で、供給がタイトになり、今年だけで30%以上値上がりしているカラーもあります。特に「青系」が厳しい。もう飲まざるを得ない。そこでしか手に入らないものなので、それは世界中どこも一緒。このままいくと産業が衰退していく。そこまで追い詰められている状況だと思います。」

▼「青色」が供給不足

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中国では去年から、当局が「中央環境査察」というものを本格的に始めていて、排気や排ガスで法令違反をしている化学メーカーに対して、どんどん操業停止を言い渡しているんです。

過去類を見ないほどの厳しい査察で、1つの化学メーカーが違反していると、連帯責任で工業団地単位で会社がなくなるという事態も起きているそうです。

特に大都市周辺で厳しくなっていて、染料産業が集まっている上海に近い江蘇省では、すでに300社以上のメーカーがなくなったという報道も出ています。

世界中で使われている染料の70%は中国で作られていて、2位のインドでも16%ほど。その中国でメーカーがなくなると、日本だけでなく世界中で染料不足に陥ることになります。

しかも、来月には上海で「中国国際輸入博覧会」が予定されていて、その前後は残っている化学メーカーも営業を停止する予定…。さらに混乱は広がりそうです。

★青い服、値上がりするかもしれません

すべてのカラーが10~20%ほど値上がりしていて、特に青は30%以上の値上がり。そうなってくると、我々消費者にも影響して来ます。再び高林さんのお話です。

貴志川工業株式会社 高林裕司さん「最終的には、アパレル産業自体、加工場や生地屋さん、アパレルメーカーに値上げを申し入れているというのが現状です。ただ、なかなかどこも値上げを受け入れてくれないというのが現状で、利益の幅を圧縮している。これだけ原料が上がって来ると、その値段では作りきれない、服を作れない状況になってくるじゃないかと思ってます。」

いまのところ、各会社、染料の在庫がまだ残っていてそれで対応しているようですが、在庫がなくなったときに一気に値上げする可能性があります。

★継続ではなく「廃業」を選ぶ工場

「中国が地球環境を本気で考え始めた」というのは良いことですが、査察に引っかかってしまった中国の化学メーカーがとった行動が、これまた混乱を引き起こしているようなんです。

貴志川工業株式会社 高林裕司さん「今まで中国はそういう環境については無視してきたが、それがダメになった。日本だとそうではなく環境に配慮して、ガスが出ないように煙が出ないように匂いが出ないように設備投資をするが、中国の会社はそこまでしない。「それなら採算が合わないのでやめます」というのがいまの状況。もうちょっと中国努力してよというのが正直なところではあるんですけどね。」

操業停止になった複数の大手化学メーカーは、移転して環境に配慮した設備投資をし、査察をクリアして操業を再開する予定です。しかし小さいメーカーは、設備投資も移転もせずに会社の営業を辞めてしまう。

そうなると残った少ない中国メーカーは中国国内の需要を優先し、海外企業への供給が滞る…。さらに世界中で染料がなくなる。という流れになるかもしれない、ということでした。

★「テールランプの赤」も不足の兆候

この悪循環で、服だけでなく、今後はいろいろなものに影響が出て来るかもしれません。すでに影響が出て来ているという話もあります。この件で取材をしている、日刊工業新聞の鈴木岳志記者のお話です。

日刊工業新聞・記者 鈴木岳志さん「特に「赤色」の染料が足りないというのは聞きますね。その赤色じゃなきゃいけないという意味では、自動車のテールランプが一番馴染みのあるもの。品不足の状態になってきて、長期化するとテールランプが作れないという事態も無きにしもあらずですね。」

▼テールランプに使われる「赤色」も危険信号

いま世界で「青」と「赤」が足りない

テールランプのカバーに赤の染料が使われています。あくまで今後の話ですが、このまま染料不足が続くと、テールランプの赤いカバーが不足するのではないかという話が出て来ています。

★LEDなら赤はいらない

そしてこのテールランプ、日本以上に影響を受ける国があるようです。自動車ライターの萩原文博さんに聞いてみました。

自動車ライター 萩原文博さん「塗料がなくなってしまうと、作るパーツがなくなりコストが高くなる。最近ではLEDのランプを使ったものなら、赤いカバーを使わなくても赤く光ることができるんですけど、高級車を中心に使われている装備なので、中国、東南アジア、これから車が増えていくところで影響を受けるのは間違い無いですね。」

▼自動車ライターの萩原文博さん

いま世界で「青」と「赤」が足りない

いま世界で「青」と「赤」が足りない

「ホンダ N-BOX」。こちらの通常仕様のモデルは、テールランプに赤いカバーが使われています。
(Photo:N-BOX G・EX Honda SENSING(FF)
ボディーカラーはモーニングミストブルー・メタリック
ディーラーオプション装着車
N-BOX G・L Honda SENSING(FF)
ボディーカラーはプラチナホワイト・パール)

いま世界で「青」と「赤」が足りない

「ホンダ N-BOX カスタム」。”カスタム”というタイプのモデルは、テールランプにLEDが使われている為、カバーは透明。
(Photo:N-BOX Custom G・EXターボ Honda SENSING(FF)
ボディーカラーはプレミアムグラマラスブロンズ・パール、プラチナホワイト・パール&ブラック ディーラーオプション装着車
N-BOX Custom G・L ターボ Honda SENSING(FF)
ボディーカラーはプラチナホワイト・パール&ブラック)

現在、日本では3~4割ほどの車でLEDライトが使用されていると言われています。そして日本よりも欧米の方がLEDを使っている車は多いので、そうなると、テールランプカバーの赤色不足は、中国や東南アジアで広がりそうです。

中国の化学メーカーの操業停止から起こる世界の染料不足で、テールランプ以外にもまだまだ表面化していない部分もあると思われます。
▼田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!

いま世界で「青」と「赤」が足りない

◆10月22日放送分より 番組名:『森本毅郎 スタンバイ!』内「現場にアタック」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20181022063000