TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。

10月26日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、笑福亭鶴瓶さんをお迎えしました。

落語家、タレント、司会、俳優、ラジオパーソナリティと、様々なジャンルで精力的に活躍されている鶴瓶さん。久米さんとは久しぶりということもあってか、初めて共演したときのこと、年齢のこと、巷で出会った面白い人たちのこと、予定の時間をオーバーしてたっぷりしゃべっていただきました。

今日は大名行列みたい

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笑福亭鶴瓶さんは1951年、大阪府生まれ。1972年、六代目笑福亭松鶴に入門。70年代後半から大阪のラジオの深夜放送で人気となり、テレビのバラエティ番組に進出。50代に入ってからは落語にも積極的に取り組み、全国各地で落語会を開いています。

また、数多くのドラマや映画で俳優としても活躍。2009年には主演映画『ディア・ドクター』で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞しています。この11月から、10年ぶりの主演作品『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』が公開ということで、普通なら映画の見どころとか撮影のエピソードで盛り上がるのですが、普通にはいかないのが久米さんと鶴瓶さんです…。

「今日はすごいですよ。お付きの人が100人ぐらいいるんじゃないですか」(久米さん)

「東映の人なんですよ。きのうからなんですよ。

日頃はオレひとりでうろうろしてるのに」(鶴瓶さん)

「さすがと思いました、あんな引き連れて。大名行列みたい」(久米さん)

「違う! いやや。東映が配給のところなんでしょ」(鶴瓶さん)

「どうしても映画の話をしたいわけですか?」(久米さん)

「したない、したない。そっちが言うからや。東映の映画やから、東映の人って…」(鶴瓶さん)

「まともに最初っから映画の話ですね」(久米さん)

「違うがな(笑)。自分が『あの人らは誰や』って…。

なんで、そんなこと。あの人らも仕事で来られてるし、なんの成果も得られんと帰ったらおかしな話になるからや。そんな、パーソナリティがようそんなこと、ゲストに呼んどいて。なんですか、この人? 前からそうなんですよ」(鶴瓶さん)

「前からそうなんですって、ちょっと誤解がある(笑)」(久米さん)

「昔もオレね、初めて久米さんにお会いするいうんでね、やってはりましたやんか、『ニュースステーション』。オレもちゃんとせなあかん思うから赤の靴下履いてたんですよ。そしたらそこばっかり言うて。

『なんやその赤の靴下は』って、関係あらへん。憶えてるでしょ、それ」(鶴瓶さん)

「憶えてる(笑)」(久米さん)

「赤の靴下ばっかり。オレもう脱ごうか思うて、なんでそないに赤ばっかり」(鶴瓶さん)

「ほかに話題が見つからなかったの(笑)」(久米さん)

帚木蓬生さんの言葉

笑福亭鶴瓶×久米宏「腹立つわぁ、なんやのこの人!」

『閉鎖病棟』は帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)さんの同名ベストセラー小説を、平山秀幸監督が映画化したもの。長野県の精神科病院では過去を背負った患者たちが生活しているのですが、そこである事件が起きる…という話です。鶴瓶さんは4年前に平山監督から「ぜひ主演に」とオファーされていたそうです。ロケは実際にある精神科病院で行われ、帚木さんも撮影を見に来たそうです。

「ぼくはあの映画を拝見して、鶴瓶さんは時間がないのによく映画1本撮る時間を捻出したなって」(久米さん)

「それを帚木さんの奥さんも言わはったんですよ、現場に来はったときにね。なんでこんな忙しい…って。これ、ものすごくええセリフですよ。忙しい人には時間がある。暇な人には時間がないって言わはったんですよ」(鶴瓶さん)

「帚木蓬生さんが?」(久米さん)

「帚木さんが。どうです、これ? ええ言葉でしょう。

もういっぺん自分で言うてみなはれ」(鶴瓶さん)

「忙しい人には時間がある。暇な人には時間がない」(久米さん)

「ええ言葉でしょ、ね?」(鶴瓶さん)

「それをぼくに向かってなんで鋭い目つきで言うんですか(笑)」(久米さん)

「ヒマそうやもん(笑)。あんな忙しかった人がなんでこないヒマになったんやろなって。そうでしょ? ものすごく忙しかってんもん。ずーっと1週間やってんのに、急にヒマになったからやねえ。クチ(しゃべるスピード)がもう少し落ちてくんのかな思うたら、クチだけ動いてるからね。ほんまに」(鶴瓶さん)

「クチだけ動いてて、ほかはだめだって言いたいんですか?」(久米さん)

「そんなことは言いたないけど(笑)」(鶴瓶さん)

「下半身がどうのとか(笑)」(久米さん)

「アホなこと言いなはんな。いや、でもこれ1回流れたんですよ。でも嬉しいじゃないですか、この歳で『主役やってくれ』言われるの」(鶴瓶さん)

帚木さんは精神科医で小説家ですが元々はTBSの職員で、久米さんとは同僚ということになります。久米さんは「ぼくよりかなり年上です」と言っていましたが、実際は帚木さんのほうが3歳年下(学年は2つ下)です。

父親が死んだ年齢まで生きる

笑福亭鶴瓶×久米宏「腹立つわぁ、なんやのこの人!」

「鶴瓶さんて年齢不詳なところがあるんですけど、ぼくとそんなに違わない」(久米さん)

「いや違う、違う! めっちゃ違うって。それおかしいですよ(笑)。8つ違うわ、たぶん」(鶴瓶さん)

「7つ」(久米さん)

「ぼく昭和26年の12月です」(鶴瓶さん)

「ぼく昭和19年の7月です」(久米さん)

「ややこし…(笑)。7つ半でしょ。7つ半て、えらいことですよ。オレが幼稚園のとき、もう中学に行かはんねんから。中学やもん。こんなもう、そんな。全然違う」(鶴瓶さん)

「相当お兄さんですね、そう言われてみりゃ」(久米さん)

「めちゃめちゃ兄きやん。だけど、67歳言うたら、うちの親父が死んだ歳なんですよ」(鶴瓶さん)

「いまその歳なの?」(久米さん)

「その歳。で、うちの義理の父も死んだ歳。師匠(6代目松鶴さん)も。みんな67で死んでるんですよ」(鶴瓶さん)

「あらあ…」(久米さん)

「でも兄きは81歳でまだピンピンしてるんですよ。だから兄きを目標に頑張ってるんですけどね。ぼく12歳違いますから、兄きと」(鶴瓶さん)

「ぼくの父親は69歳で亡くなったんですよ。ぼく、そのとき27歳だったんです。父が死んだその日から、なんとか69歳まで生きようって思ったんです」(久米さん)

「おんなじように思てるわ。オレも33ぐらいのときですよ」(鶴瓶さん)

「27から69まで、ぼくほとんど、人生最大の目標だったんです。69歳まで、父が死んだ歳まで生きるって。できたら1年オーバーして。それができたら、さらに1年オーバーして。だから、70歳になったときすごく嬉しかったんです」(久米さん)

「そういうのありますよね。いや、分かりますよ」(鶴瓶さん)

「鶴瓶さんは、今年のクリスマスイブの前の日(12月23日)に68歳になるわけでしょ。そうするとお父さまより1年長く…。それって、かなり男の子にとっては意味があるんですよ」(久米さん)

「ほんまにそう。ぼくは67歳を目標にきたんですよね」(鶴瓶さん)

「分かります。仕事じゃないんですよ、生きること。ただ生きること」(久米さん)

「いや、生きることです。これ、すごいことですよ。仕事なんてそれぞれやもん。生きるということだけでね。だから、それまで一生懸命、生きようと思うたからね。だから話を戻すわけやないけど、そんな主役という仕事をいただいたら、『やりましょう!』と」(鶴瓶さん)

「忙しければ時間が取れる…」(久米さん)

「そうそう。そこ、もいっぺん反省して、仕事しなはれや(笑)」(鶴瓶さん)

普通の人のほうがおもろい

笑福亭鶴瓶×久米宏「腹立つわぁ、なんやのこの人!」

鶴瓶さんといえば、普通の人たちの何でもない会話や日常の風景から面白いシーンを抽出して話す名人です。よくそんなに面白い出来事に遭遇するものだと思いますが、そんなことはしょっちゅうあると鶴瓶さんは言います。

「普通の人に興味がある?」(久米さん)

「いや、興味があるゆうか、接することが多いから。あのー。おばちゃんが、握手したあと『もう死んでもいい』って言わはったんですよ。そうですか、ありがとうございます言うて去っていったら、そのおばちゃんが、ばあー走ってきて、『死んでもいいゆうのは、おたくが死んでいいという意味じゃないですよ!』言うて(笑)。分かってるて。それはこの春ぐらいですよ」(鶴瓶さん)

「20年前の話とか、そういうんじゃないんだ?」(久米さん)

「最近の話です。『家族に乾杯』でテレビ撮ってたら、自転車に乗ってる人がぎゅうー止まってね。写真撮ってとか言わはるのかな思ったら、『鶴瓶ちゃん、暑いから帽子かぶりや』って去っていったんですよ(笑)。一般の人って、ぼくがテレビ出てるとか意識ないと思いますよね」(鶴瓶さん)

「その出来事はみんなちっちゃなメモ帳に書いてある?」(久米さん)

「書いてある。全部書いてあります」(鶴瓶さん)

「それが忘れない秘訣ですかね」(久米さん)

「そうですね。それで年に1回『鶴瓶噺』って2時間半ぐらい、毎日違う話をするんですよ(今年は4月に開催)。そのときに、よう似た系統の話を集めるんですよ。〝ファンの人〟とかね、〝電話がかかってきた人〟とか。常識ない人だって怒ってしまうとそれまでやけど、おもろいと受け取ったら、おもろいですよ」(鶴瓶さん)

「ああ」(久米さん)

「知らないおとうさんから電話かかってきたんですよ、なんか知らんけど。それで『ぼくハワイですよ』言うたら、『うちの娘のケータイいじってたら、鶴瓶って書いてたから電話したんや』って(笑)。そしたら2ヵ月ぐらい経ってから『もうそろそろハワイから帰ってきましたか?』って。これも誰だか分からない。番号登録してないから。そしたらあんときのおっさんやったんです(笑)。ええかげんにせえっちゅうねん。そんなん多いでっせ」(鶴瓶さん)

「はははは」(久米さん)

「それとか、おばちゃんがぶわぁ来て、『ブレイクしたなあ』って(笑)。おれ、いつやねん(笑)。最近ですよ、NHKの廊下歩いてたら。CMぎょうさん流れてるじゃないですか。ああいうの見たら、ぎょうさん出てるという意識があるんでしょう。『ブレイクしたなあ』って(笑)」(鶴瓶さん)

鶴瓶さんは年間にかなりの数の落語会を開いて全国各地を回っているのですが、その行く先々でも面白い人に遭遇するそうです。

「こないだね、200人ぐらいの落語会で、前に座った人がいてて。全然、その人と目線合わせてないんですよ。『八五郎、面を上げい。八五郎、面を上げい! 八五郎?』ってやったら、『はい』って立たはった(笑)」(鶴瓶さん)

「それは落語ですねえ(笑)」(久米さん)

「『妾馬(めかうま)』。真ん前で立たはったから。それがねえ、いじられへんでしょ(笑)。その人もどうしてええか分からんし。ずーっと無視してやってたら、腰砕けのように座らはって。オレじゃないんだなって思わはったんやろね(笑)。そんなこと起きるんですよ」(鶴瓶さん)

「でも、『面を上げい』で立ち上がるって、相当なもんですよ」(久米さん)

「相当なもんよ。こんなん、参加型やん(笑)。田舎のほうやったから、あんまり落語に携わったことないやろから、参加型なんかなと思わはったのか知らんけど」(鶴瓶さん)

大阪弁は「目ぇ! 手ぇ! 毛ぇ!」

笑福亭鶴瓶×久米宏「腹立つわぁ、なんやのこの人!」

鶴瓶さんの落語会での珍エピソードは続くのですが、久米さんが大阪弁を聞き取れなかったところから話は思わぬ方向へ…。

「会場が小さいとこで、クーラーが直接当たってたんでしょうね。おっさんが、オレがしゃべってたら急に『目ぇ痛い! 目ぇ痛い! 目ぇ痛い!』って出て行かはったんですよ。黙って出ていけよ、それやったら(笑)。そんな目にも遭いましたんやで」(鶴瓶さん)

「いまのは解説しないと分からないと思いますけど、『めーたい、めーたい』っていうのは、冷たい、冷たい?」(久米さん)

「目が痛いや! 目が乾いたんやろな。目が痛い、目が…『目が痛い』ではおもろないねん、全然(笑)。『目ぇ痛い! 目ぇ痛い!』って言わな。分からん人は笑わんでいいんや、そんなもん。目が痛い、目が痛い、では大阪弁は笑わないやんか。なんやこの人! ほんまに。腹立ってきたわ」(鶴瓶さん)

「関西落語ってことをすっかり忘れてた。めーたい、めーたい…」(久米さん)

「『めーたい』じゃない、目ぇ痛い! 関西は、目のことを『目ぇ』。小さい『え』を付けるの。目ぇ。手ぇ。歯ぁ。毛ぇ」(鶴瓶さん)

「頭の毛は『けぇ』って言うんだ。歯は『はぁ』なんだ」(久米さん)

「歯ぁ! 目ぇ! 手ぇ! 毛ぇ!」(鶴瓶さん)

「『け』って言わないんだ。『けぇ』って伸びるんだ」(久米さん)

「そっちはどない言いまんねん?」(鶴瓶さん)

「め、は、け」(久米さん)

「め、は、け? フフ、おかしい(笑)。かなりバカにしてるな、関西人を」(鶴瓶さん)

「め、は、け、て(笑)」(久米さん)

「腹立つわぁ(笑)。なんやのこの人。久しぶりに会うのよ? なんやこの人!前、会うたときはずーっと赤い靴下いじってな」(鶴瓶さん)

「今日はありがとうございました。生放送で時間ないんです(笑)。もう4分押しちゃってるんです」(久米さん)

「全然言うてないやんか、『閉鎖病棟』のこと!」(鶴瓶さん)

「全編、『閉鎖病棟』の話ですよ。なにを言ってるんですか鶴瓶さん、急にパンフレットを手に取ったりして(笑)」(久米さん)

「来てや! 『閉鎖病棟』、来てや!」(鶴瓶さん)

笑福亭鶴瓶さんのご感想

笑福亭鶴瓶×久米宏「腹立つわぁ、なんやのこの人!」

感想なんてあらへん。大阪弁のことばっかりいじりはって、映画のこと、ひとつもしゃべられへんかった。
久米さん、反省したらどうや。こんな屈辱、初めてや。あー、充実感ないわー。

笑福亭鶴瓶さん、ありがとうございました!!

◆11月2日放送分より 番組名:「久米宏 ラジオなんですけど」内「今週のスポットライト」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191102140000